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体裁に拘って
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四人は、吸血鬼とダンピールなので、睡眠は四時間程度取れれば十分だった。これは、肉体的には幼い悠里と安和も変わらない。後は、眠くなれば仮眠を取る程度で済む。
アオは午後の三時くらいまで寝ていることが多いし、起きれば向こうからメッセージが来る。なのでそれまでは適当に時間を潰す。
「セルゲイ、昨日のショップに行きたい。ついてきて」
安和が言うと、セルゲイは微笑みながら、
「はい♡」
と応えてくれた。こうしてまた、セルゲイと安和は一緒に出かけていった。
一方、ミハエルは悠里が昨夜見た蝶<オオルリオビアゲハ>についてまとめているのを隣に座って見守る。
『オオルリオビアゲハ。ジャカルタの街を少し外れたところで発見。こんなに街に近いところでも見られるのは意外。
でも、日本でもたまに街中でもアゲハチョウが見られたりすることもあるのでそういうものなのか。
青い模様がとてもきれいな蝶だった。
人間の開発によって生息域が狭められているという話もあるけど、自然でも環境が激変することは珍しくない。そういう中でも力強く生きてる彼らに僕は感銘を受けた』
自分がスケッチしたそれの脇に添えられたコメントに、ミハエルが目を細める。
こういう時には、自然を蔑ろにするかのような人間の振る舞いに対して攻撃的な文言を並べてしまいがちになるものの、悠里のそれはとても理性的だった。そういうところからも、ミハエルは子供達の心理状態を把握する。
『男の子だから』
『元気な証拠』
と軽く考えない。『元気な』のと『攻撃的な』のは違う。攻撃的にならずにいられないような心理状態なら、それを緩和しなければならない。
別に攻撃性を磨いたりしなくても、ダンピールは生来、ライオンのような激しい気性を備えているのだから、そちらは別に伸ばさなくてもいいのだ。むしろそれを律するための穏やかさこそを伸ばす。それくらいで丁度いい。
ダンピールが本質的に備えている気性の激しさを、ミハエルも肌身に沁みて知っている。
特に悠里の場合は、
『男の子なんだから乱暴なくらいが丁度いい!』
みたいな考えで接するのは危険である。むしろ、軟弱そうに見えるくらいでいい。ダンピールが秘めている攻撃性はそれくらいのものだった。それをいかにして律するかを常に意識している実例が身近にあった。
だから、どこの誰が言い始めたのかも分からないような『男は男らしく』という迷信には惑わされない。
大切なのは実利であって体裁じゃない。体裁に拘って結果として大きな損害をこうむることになった事例は、人間の歴史の中でも数限りなくあったはずだから。
アオは午後の三時くらいまで寝ていることが多いし、起きれば向こうからメッセージが来る。なのでそれまでは適当に時間を潰す。
「セルゲイ、昨日のショップに行きたい。ついてきて」
安和が言うと、セルゲイは微笑みながら、
「はい♡」
と応えてくれた。こうしてまた、セルゲイと安和は一緒に出かけていった。
一方、ミハエルは悠里が昨夜見た蝶<オオルリオビアゲハ>についてまとめているのを隣に座って見守る。
『オオルリオビアゲハ。ジャカルタの街を少し外れたところで発見。こんなに街に近いところでも見られるのは意外。
でも、日本でもたまに街中でもアゲハチョウが見られたりすることもあるのでそういうものなのか。
青い模様がとてもきれいな蝶だった。
人間の開発によって生息域が狭められているという話もあるけど、自然でも環境が激変することは珍しくない。そういう中でも力強く生きてる彼らに僕は感銘を受けた』
自分がスケッチしたそれの脇に添えられたコメントに、ミハエルが目を細める。
こういう時には、自然を蔑ろにするかのような人間の振る舞いに対して攻撃的な文言を並べてしまいがちになるものの、悠里のそれはとても理性的だった。そういうところからも、ミハエルは子供達の心理状態を把握する。
『男の子だから』
『元気な証拠』
と軽く考えない。『元気な』のと『攻撃的な』のは違う。攻撃的にならずにいられないような心理状態なら、それを緩和しなければならない。
別に攻撃性を磨いたりしなくても、ダンピールは生来、ライオンのような激しい気性を備えているのだから、そちらは別に伸ばさなくてもいいのだ。むしろそれを律するための穏やかさこそを伸ばす。それくらいで丁度いい。
ダンピールが本質的に備えている気性の激しさを、ミハエルも肌身に沁みて知っている。
特に悠里の場合は、
『男の子なんだから乱暴なくらいが丁度いい!』
みたいな考えで接するのは危険である。むしろ、軟弱そうに見えるくらいでいい。ダンピールが秘めている攻撃性はそれくらいのものだった。それをいかにして律するかを常に意識している実例が身近にあった。
だから、どこの誰が言い始めたのかも分からないような『男は男らしく』という迷信には惑わされない。
大切なのは実利であって体裁じゃない。体裁に拘って結果として大きな損害をこうむることになった事例は、人間の歴史の中でも数限りなくあったはずだから。
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