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立派なお子さん
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そうして、ミハエル達が留守にする間、寂しくないようにとなるべく頻繁に、洸、恵莉花、秋生が蒼井家を訪ねてくれるようにする一方、セルゲイに連れられて、ミハエル、悠里、安和は空港へとやってきていた。
しかしそこでももう手慣れたものだ。完全に親子にしか見えない様子で一緒に行動する。
すると、
「あら、お利口な子達ねえ♡ ご旅行?」
行儀よくロビーの椅子に座っていたミハエルと悠里と安和の姿に、見知らぬ老婦人が笑顔で話しかけてきた。するとミハエルが、
「はい。これからお父さんとジャカルタに向かいます」
流暢な日本語で応えた。変に片言にするよりも自然な話し方の方が違和感を覚えられないで済むということだった。
「まあ、日本語がお上手ね。日本には長いの?」
「はい。お父さんのお仕事で一緒に行けない時は、お父さんの友達のところにお世話になってますから。年の半分くらいは日本にいます」
「そうなの? それはたいへんね」
「いえ、みんな優しい人だから、ホントの家族みたいに仲良くさせてもらってます」
一見すると十歳かそこらにしか見えないミハエルのそのしっかりした受け答えに、老婦人はいたく感心したようだった。
「すごいわねえ。私の孫も貴方達のようにお利口だったらいいんだけど、なかなか言うこときいてくれなくて……」
やや困ったような表情で頬に手を当てて言うその様子に、ミハエルはいろいろと思うところもありながらも、
「おばさんも優しい人だから大丈夫ですよ。お孫さん達も分かってくれてると思います」
しっかりとした社交辞令で返した。他人の家庭の事情には原則として口出ししないようにしているからだった。
「ホントに立派なお子さんねえ」
感心するのを通り越して羨ましそうに老婦人が見詰めてくるのを、悠里と安和はよく分かってなさそうなきょとんとした表情で見詰め返していた。見知らぬ相手への対応はミハエルに任せるというのが徹底されていて、悠里と安和はただよく分からないふりをしているというのが原則だった。
実年齢では中学生、精神年齢では高校生レベルの二人が変に受け答えすると、さすがに三歳くらいにしか見えない外見とのギャップが大きすぎるからだ。だからといっていかにも幼児のような振る舞いをするとかえって嘘くさくもなる。
その点、ミハエルなら、しっかりした受け答えをしても、
『すごく利口な子供』
で済む。彼くらいの大人びた話し方をする子供は、たまにではあるものの実際にいるから。
するとそこに、
「ミハエル、ユーリ、アンナ」
と声が掛けられた。カウンターで搭乗手続きを終わらせたセルゲイだった。
「は~い!」
ミハエルが返事をして、
「じゃあ、僕達は行きますから」
「あら、そうなの? 気を付けてね」
残念そうに言う老婦人に手を振りながら、三人はセルゲイの方へとパタパタと駆けていったのだった。
しかしそこでももう手慣れたものだ。完全に親子にしか見えない様子で一緒に行動する。
すると、
「あら、お利口な子達ねえ♡ ご旅行?」
行儀よくロビーの椅子に座っていたミハエルと悠里と安和の姿に、見知らぬ老婦人が笑顔で話しかけてきた。するとミハエルが、
「はい。これからお父さんとジャカルタに向かいます」
流暢な日本語で応えた。変に片言にするよりも自然な話し方の方が違和感を覚えられないで済むということだった。
「まあ、日本語がお上手ね。日本には長いの?」
「はい。お父さんのお仕事で一緒に行けない時は、お父さんの友達のところにお世話になってますから。年の半分くらいは日本にいます」
「そうなの? それはたいへんね」
「いえ、みんな優しい人だから、ホントの家族みたいに仲良くさせてもらってます」
一見すると十歳かそこらにしか見えないミハエルのそのしっかりした受け答えに、老婦人はいたく感心したようだった。
「すごいわねえ。私の孫も貴方達のようにお利口だったらいいんだけど、なかなか言うこときいてくれなくて……」
やや困ったような表情で頬に手を当てて言うその様子に、ミハエルはいろいろと思うところもありながらも、
「おばさんも優しい人だから大丈夫ですよ。お孫さん達も分かってくれてると思います」
しっかりとした社交辞令で返した。他人の家庭の事情には原則として口出ししないようにしているからだった。
「ホントに立派なお子さんねえ」
感心するのを通り越して羨ましそうに老婦人が見詰めてくるのを、悠里と安和はよく分かってなさそうなきょとんとした表情で見詰め返していた。見知らぬ相手への対応はミハエルに任せるというのが徹底されていて、悠里と安和はただよく分からないふりをしているというのが原則だった。
実年齢では中学生、精神年齢では高校生レベルの二人が変に受け答えすると、さすがに三歳くらいにしか見えない外見とのギャップが大きすぎるからだ。だからといっていかにも幼児のような振る舞いをするとかえって嘘くさくもなる。
その点、ミハエルなら、しっかりした受け答えをしても、
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「ミハエル、ユーリ、アンナ」
と声が掛けられた。カウンターで搭乗手続きを終わらせたセルゲイだった。
「は~い!」
ミハエルが返事をして、
「じゃあ、僕達は行きますから」
「あら、そうなの? 気を付けてね」
残念そうに言う老婦人に手を振りながら、三人はセルゲイの方へとパタパタと駆けていったのだった。
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