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甘えっこさんですね♡

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家族揃ってリビングで録画した深夜アニメを視る。今、テレビに映し出されているのは、典型的な恋愛コメディものだった。

なので、悠里ユーリとしては本来、興味がないはずだけれども、

「あははははは♡」

楽しげに笑いながら視ている。

悠里にとって興味を持てないのは『惚れた腫れた』の部分であって、コメディ部分はそれなりに楽しめるからだ。

けれど、だからと言って、

『恋愛要素は要らない。邪魔だ』

みたいなことは言わない。

『自分の好みに合わせるべきだ』

とは思わないから。

これも、普段から両親に愛されている実感があることで、十分、満たされているからだろう。そのおかげで、他で満たされようとする必要がないからだった。

「顔! 顔~っ!」

アニメのヒロインが、ヒロインとしてはありえない顔になると、指をさしてツッコむ。

「きゃはははは♡」

「い~ひひひひ♡」

安和アンナ椿つばきも腹を抱えて笑っていた。

そんな子供達の様子を、ミハエルが穏やかに微笑みながら見守る。

さすがにミハエル自身はアニメにはそれほど興味はないものの、家族が楽しそうにしているのを見るのが彼自身にとっても楽しみだった。

穏やかに微笑みながら子供達を見ている彼の姿は、それだけでも至高の芸術品のようだ。

そしてアオは、子供達とミハエルの姿を見ているとあまりの幸せに蕩けそうになる。

締まりのない顔で自分を見ているアオに気付いたミハエルが、ふわっと微笑み返す。

もうそれだけで嫌なことがすべて氷解してしまう。

すると、そんなアオの膝に椿つばきが乗ってきた。

「ママ~♡」

鼻にかかった甘えた声でアオの胸に頬をすりつける。

「はいはい♡ 甘えっこさんですね♡」

そう言うアオの顔もデレデレだ。

『もう十歳なんだから』

なんて彼女は言わない。甘えたいなら甘えたいだけ甘えてくれればいいと思ってる。

大切なことはいつもちゃんと伝えてる。

「他の人に意地悪とかしたら、せっかくこんなに楽しいのにそれがメチャクチャになっちゃうよ」

と。

「え~っ!? そんなのヤダ~っ!! つばき、イジワルとかしないも~ん!」

椿はそう言ってくれる。実際、学校でも椿は他の子にもとても優しかった。意地悪をしているところを見られたことがなかった。

パパとママにしてもらっていることを、優しく穏やかに接してもらってることを、他の子に対してもやった。それ以外の接し方を知らなかった。わざと嫌味を言ったり、罵ったり、手を振り上げたりという形での関わり方を知らなかった。だから他の子達からも好かれていた。

アオとさくらのやり取りは、あくまで<お仕事>だから。だから仕事以外でそういう風に他人と接するという前提が椿にはなかったのだった。

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