10 / 571
甘えっこさんですね♡
しおりを挟む
家族揃ってリビングで録画した深夜アニメを視る。今、テレビに映し出されているのは、典型的な恋愛コメディものだった。
なので、悠里としては本来、興味がないはずだけれども、
「あははははは♡」
楽しげに笑いながら視ている。
悠里にとって興味を持てないのは『惚れた腫れた』の部分であって、コメディ部分はそれなりに楽しめるからだ。
けれど、だからと言って、
『恋愛要素は要らない。邪魔だ』
みたいなことは言わない。
『自分の好みに合わせるべきだ』
とは思わないから。
これも、普段から両親に愛されている実感があることで、十分、満たされているからだろう。そのおかげで、他で満たされようとする必要がないからだった。
「顔! 顔~っ!」
アニメのヒロインが、ヒロインとしてはありえない顔になると、指をさしてツッコむ。
「きゃはははは♡」
「い~ひひひひ♡」
安和と椿も腹を抱えて笑っていた。
そんな子供達の様子を、ミハエルが穏やかに微笑みながら見守る。
さすがにミハエル自身はアニメにはそれほど興味はないものの、家族が楽しそうにしているのを見るのが彼自身にとっても楽しみだった。
穏やかに微笑みながら子供達を見ている彼の姿は、それだけでも至高の芸術品のようだ。
そしてアオは、子供達とミハエルの姿を見ているとあまりの幸せに蕩けそうになる。
締まりのない顔で自分を見ているアオに気付いたミハエルが、ふわっと微笑み返す。
もうそれだけで嫌なことがすべて氷解してしまう。
すると、そんなアオの膝に椿が乗ってきた。
「ママ~♡」
鼻にかかった甘えた声でアオの胸に頬をすりつける。
「はいはい♡ 甘えっこさんですね♡」
そう言うアオの顔もデレデレだ。
『もう十歳なんだから』
なんて彼女は言わない。甘えたいなら甘えたいだけ甘えてくれればいいと思ってる。
大切なことはいつもちゃんと伝えてる。
「他の人に意地悪とかしたら、せっかくこんなに楽しいのにそれがメチャクチャになっちゃうよ」
と。
「え~っ!? そんなのヤダ~っ!! つばき、イジワルとかしないも~ん!」
椿はそう言ってくれる。実際、学校でも椿は他の子にもとても優しかった。意地悪をしているところを見られたことがなかった。
パパとママにしてもらっていることを、優しく穏やかに接してもらってることを、他の子に対してもやった。それ以外の接し方を知らなかった。わざと嫌味を言ったり、罵ったり、手を振り上げたりという形での関わり方を知らなかった。だから他の子達からも好かれていた。
アオとさくらのやり取りは、あくまで<お仕事>だから。だから仕事以外でそういう風に他人と接するという前提が椿にはなかったのだった。
なので、悠里としては本来、興味がないはずだけれども、
「あははははは♡」
楽しげに笑いながら視ている。
悠里にとって興味を持てないのは『惚れた腫れた』の部分であって、コメディ部分はそれなりに楽しめるからだ。
けれど、だからと言って、
『恋愛要素は要らない。邪魔だ』
みたいなことは言わない。
『自分の好みに合わせるべきだ』
とは思わないから。
これも、普段から両親に愛されている実感があることで、十分、満たされているからだろう。そのおかげで、他で満たされようとする必要がないからだった。
「顔! 顔~っ!」
アニメのヒロインが、ヒロインとしてはありえない顔になると、指をさしてツッコむ。
「きゃはははは♡」
「い~ひひひひ♡」
安和と椿も腹を抱えて笑っていた。
そんな子供達の様子を、ミハエルが穏やかに微笑みながら見守る。
さすがにミハエル自身はアニメにはそれほど興味はないものの、家族が楽しそうにしているのを見るのが彼自身にとっても楽しみだった。
穏やかに微笑みながら子供達を見ている彼の姿は、それだけでも至高の芸術品のようだ。
そしてアオは、子供達とミハエルの姿を見ているとあまりの幸せに蕩けそうになる。
締まりのない顔で自分を見ているアオに気付いたミハエルが、ふわっと微笑み返す。
もうそれだけで嫌なことがすべて氷解してしまう。
すると、そんなアオの膝に椿が乗ってきた。
「ママ~♡」
鼻にかかった甘えた声でアオの胸に頬をすりつける。
「はいはい♡ 甘えっこさんですね♡」
そう言うアオの顔もデレデレだ。
『もう十歳なんだから』
なんて彼女は言わない。甘えたいなら甘えたいだけ甘えてくれればいいと思ってる。
大切なことはいつもちゃんと伝えてる。
「他の人に意地悪とかしたら、せっかくこんなに楽しいのにそれがメチャクチャになっちゃうよ」
と。
「え~っ!? そんなのヤダ~っ!! つばき、イジワルとかしないも~ん!」
椿はそう言ってくれる。実際、学校でも椿は他の子にもとても優しかった。意地悪をしているところを見られたことがなかった。
パパとママにしてもらっていることを、優しく穏やかに接してもらってることを、他の子に対してもやった。それ以外の接し方を知らなかった。わざと嫌味を言ったり、罵ったり、手を振り上げたりという形での関わり方を知らなかった。だから他の子達からも好かれていた。
アオとさくらのやり取りは、あくまで<お仕事>だから。だから仕事以外でそういう風に他人と接するという前提が椿にはなかったのだった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
小樽あやかし香堂
森原すみれ@薬膳おおかみ①②③刊行
キャラ文芸
【お香×あやかし×北海道小樽市】
26歳千草野紬(ちぐさのつむぎ)は、失業直後、子犬の落とし物を拾う。
子犬を追い辿り着いたのは、歴史の街――「小樽」。
その街で、香炉を手にした和装男子、橘紫苑(たちばなしおん)と出逢う。
香堂を営む紫苑が作りだすお香に、すっかり魅せられる紬。
ところが、魅せられるのは「人間」だけではないみたいで……!?
※ノベマ!、小説家になろうに同作掲載しております
幼馴染はとても病院嫌い!
ならくま。くん
キャラ文芸
三人は生まれた時からずっと一緒。
虹葉琉衣(にじは るい)はとても臆病で見た目が女の子っぽい整形外科医。口調も女の子っぽいので2人に女の子扱いされる。病院がマジで嫌い。ただ仕事モードに入るとてきぱき働く。病弱で持病を持っていてでもその薬がすごく苦手
氷川蓮(ひかわ れん)は琉衣の主治医。とてもイケメンで優しい小児科医。けっこうSなので幼馴染の反応を楽しみにしている。ただあまりにも琉衣がごねるととても怒る。
佐久間彩斗(さくま あやと)は小児科の看護師をしている優しい仕事ができるイケメン。琉衣のことを子供扱いする。二人と幼馴染。
病院の院長が蓮でこの病院には整形外科と小児科しかない
家は病院とつながっている。
虎の帝は華の妃を希う
響 蒼華
キャラ文芸
―その華は、虎の帝の為にこそ
かつて、力ある獣であった虎とそれに寄り添う天女が開いたとされる国・辿華。
当代の皇帝は、継母である皇太后に全てを任せて怠惰を貪る愚鈍な皇帝であると言われている。
その国にて暮らす華眞は、両親を亡くして以来、叔父達のもとで周囲が同情する程こき使われていた。
しかし、当人は全く堪えておらず、かつて生き別れとなった可愛い妹・小虎と再会する事だけを望み暮らしていた。
ある日、華眞に後宮へ妃嬪として入る話が持ち上がる。
何やら挙動不審な叔父達の様子が気になりながらも受け入れた華眞だったが、入宮から十日を経て皇帝と対面することになる。
見るものの魂を蕩かすと評判の美貌の皇帝は、何故か華眞を見て突如涙を零して……。
変り行くものと、不変のもの。
それでも守りたいという想いが咲かせる奇跡の華は、虎の帝の為に。
イラスト:佐藤 亘 様
神竜に丸呑みされたオッサン、生きるために竜肉食べてたらリザードマンになってた
空松蓮司
ファンタジー
A級パーティに荷物持ちとして参加していたオッサン、ダンザはある日パーティのリーダーであるザイロスに囮にされ、神竜に丸呑みされる。
神竜の中は食料も水も何もない。あるのは薄ピンク色の壁……神竜の肉壁だけだ。だからダンザは肉壁から剝ぎ取った神竜の肉で腹を満たし、剥ぎ取る際に噴き出してきた神竜の血で喉を潤した。そうやって神竜の中で過ごすこと189日……彼の体はリザードマンになっていた。
しかもどうやらただのリザードマンではないらしく、その鱗は神竜の鱗、その血液は神竜の血液、その眼は神竜の眼と同等のモノになっていた。ダンザは異形の体に戸惑いつつも、幼き頃から欲していた『強さ』を手に入れたことを喜び、それを正しく使おうと誓った。
さぁ始めよう。ずっと憧れていた英雄譚を。
……主人公はリザードマンだけどね。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる