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オレの前で他の奴を気遣うな!
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ところで俺は、羅美の前では『大虎』とは呼ばないようにしてるが、溝口や倉城の前では、そう呼ぶようにしてる。たぶん、俺以外の人間の前では『羅美』って名前を気安く使ってほしくないんだろうなって感じたからだ。
<羅美>という名前は、実の父親が付けてくれたものらしい。だから、自分が認めてない相手に口にされたくないんだろう。まあ倉城は児童相談所の職員ってこともあってか『羅美さん』と呼ぶが、溝口は<刑事>だからか今でも『大虎』と呼ぶ。それでも俺が『羅美』と呼べば溝口もそう呼ばざるをえなくなるだろうし、だから、だな。
『なんでそこまで気を遣ってやらなきゃいけないんだ!?』
とか言う奴もいるだろうが、はあ? そう言うお前が、
『オレの前で他の奴を気遣うな!』
って、自分に対する気遣いを求めてるだけじゃねえか。違うとは言わせねえぞ? 本当に違うならそもそも他人様が誰を気遣おうがてめえには関係ねえ話だからなあ? それにいちいち口出しするってのは、
『自分を気遣え!』
と思ってるからだろうが!? 自分の気に入らないタレントがテレビに出てるってのが許せないから文句を言うってのと、自分の気に入らないイラストが看板に使われてるから文句を言うってのと、同じじゃねえか!
自分が気遣われたいんならまず自分から周りの人間を気遣え! 一方的に気遣われたいってのが許されるのは子供のうちだけだ。そして羅美はまだ子供だ。だから俺は彼女を気遣ったりもする。てめえが親から気遣ってもらえなかったからって僻んでんじゃねえよ!! 自分を大人だと思うんなら『親の所為』にしてないで自分で何とかしろ!!
って話だな。
ま、いずれにせよ俺は、長女に対していい父親でいられなかった反省の意味も込めて、羅美に対してはなるべくそれに近付けるようにしたいんだよ。もちろん完璧にはなれないとしても、その努力はしたい。俺の両親が俺のことを本当は邪魔だと思ってたからってそんな両親の所為にしていつまでも<尊敬できない親>のままでいたいとも思わない。
長女の時にはそこまでできなかったことに対する自戒の念も込めてな。
いくら、
『赤の他人よりも余所余所しい関係だと感じてた』
からって、それも結局、『前妻や長女の所為』にしてるだけだし。
羅美の誕生日が終わると、今度はすぐにクリスマスがやってきた。
「クリスマスプレゼントに何か欲しいものはあるか?」
俺が問い掛けると、
「このぬいぐるみが欲しい!」
と、スマホの画面を見せてきた。そこには、絶妙に可愛いのか可愛くないのかよく分からない、サメのぬいぐるみがあった。しかもでかい。そして値段は一万三千円ときた。
まあでも、
「分かった。それにしよう」
俺が応えると、
「やったあ♡」
羅美はまた小さい子供そのものの様子で喜んだんだ。
<羅美>という名前は、実の父親が付けてくれたものらしい。だから、自分が認めてない相手に口にされたくないんだろう。まあ倉城は児童相談所の職員ってこともあってか『羅美さん』と呼ぶが、溝口は<刑事>だからか今でも『大虎』と呼ぶ。それでも俺が『羅美』と呼べば溝口もそう呼ばざるをえなくなるだろうし、だから、だな。
『なんでそこまで気を遣ってやらなきゃいけないんだ!?』
とか言う奴もいるだろうが、はあ? そう言うお前が、
『オレの前で他の奴を気遣うな!』
って、自分に対する気遣いを求めてるだけじゃねえか。違うとは言わせねえぞ? 本当に違うならそもそも他人様が誰を気遣おうがてめえには関係ねえ話だからなあ? それにいちいち口出しするってのは、
『自分を気遣え!』
と思ってるからだろうが!? 自分の気に入らないタレントがテレビに出てるってのが許せないから文句を言うってのと、自分の気に入らないイラストが看板に使われてるから文句を言うってのと、同じじゃねえか!
自分が気遣われたいんならまず自分から周りの人間を気遣え! 一方的に気遣われたいってのが許されるのは子供のうちだけだ。そして羅美はまだ子供だ。だから俺は彼女を気遣ったりもする。てめえが親から気遣ってもらえなかったからって僻んでんじゃねえよ!! 自分を大人だと思うんなら『親の所為』にしてないで自分で何とかしろ!!
って話だな。
ま、いずれにせよ俺は、長女に対していい父親でいられなかった反省の意味も込めて、羅美に対してはなるべくそれに近付けるようにしたいんだよ。もちろん完璧にはなれないとしても、その努力はしたい。俺の両親が俺のことを本当は邪魔だと思ってたからってそんな両親の所為にしていつまでも<尊敬できない親>のままでいたいとも思わない。
長女の時にはそこまでできなかったことに対する自戒の念も込めてな。
いくら、
『赤の他人よりも余所余所しい関係だと感じてた』
からって、それも結局、『前妻や長女の所為』にしてるだけだし。
羅美の誕生日が終わると、今度はすぐにクリスマスがやってきた。
「クリスマスプレゼントに何か欲しいものはあるか?」
俺が問い掛けると、
「このぬいぐるみが欲しい!」
と、スマホの画面を見せてきた。そこには、絶妙に可愛いのか可愛くないのかよく分からない、サメのぬいぐるみがあった。しかもでかい。そして値段は一万三千円ときた。
まあでも、
「分かった。それにしよう」
俺が応えると、
「やったあ♡」
羅美はまた小さい子供そのものの様子で喜んだんだ。
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