コグマと大虎 ~捨てられたおっさんと拾われた女子高生~

京衛武百十

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ありがとうな

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『本当は子供なんて欲しくなかった』
 であろう俺の両親については、自分の人生を好きに歩んでもらえばそれでいいと思う。ま、さらに歳とって介護が必要になったら施設にでも入ってもらうさ。金は出してやるつもりだ。
 欲しくもねえのに子供を作って、それで、
『養ってやる代わりにマウント取ってストレス解消に利用する』
 なんてことをするんなら、自分も同じことをされる覚悟があるんだよなあ? 歳とって誰かに養われなきゃ生きられなくなった時に、『養ってもらう代わりにストレス解消に利用される』覚悟があってそうしてたんだよなあ?
『自分も親からそうされた! だから自分もそうしただけだ!』
 なんて、『親の所為』にしてるだけだろ? 子供も作れるようないい歳した大人になって『自分も親からそうされたから』なんて言い訳が通用しないことぐらい理解できないとおかしいだろ? ましてや、
『親の所為にすんな!』
 とかでかい口叩くんならよ。
 だが俺は、自分の親をストレス解消に利用するつもりはない。金で誰かに介護してもらえばいい。その金は出してやる。
『お前を育てるのにどれだけ金が掛かったか!』
 とか言わせねえよ。それを言うなら、
『お前の老後の面倒を見るのにどれだけ金が掛かるか、考えろ』
 と言わせてもらう。
 自分の世間体のために嫌々子供を育ててたんだろ? だったらそれは『お前自身のため』であって、『子供ために』にやったことじゃないよな?
 そしてこれは、俺自身に対しても言えることだ。世間体のために妥協して前妻と結婚して長女を設けた俺自身に対してな。だから長女が俺に対して<恩>を感じてなくてもいっこうにかまわない。すべては俺自身の都合でやったことだ。長女には何の責任もない。
 むしろ俺みたいな父親の下にきちまったことを申し訳なく思うよ。
 両親と同じで、俺は、『子供なんか欲しくなかった』んだ。前妻との間では。なのに無責任にも長女に来てもらったんだから、それに対する<報い>は必要だろうさ。
 前妻と長女に捨てられたのも、まあ、その一つだな。
 なのに、そんな俺がこうして羅美を<娘>として迎えてるんだから、人生ってのは何が起こるか分からないし、俺が知ってる部分だけが<この世のすべて>ってわけでもなかったのを思い知らされる。
 俺は本当に子供が要らなかったんじゃない。あくまで、
『前妻との間には子供なんて要らなかった』
 だけなんだと気付かされた。

 羅美、ありがとうな。お前がそれを教えてくれたんだ。馬鹿な俺に。

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