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あくまでその当人を見る

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 女が男から頭を撫でられて必ず喜ぶとか思ってる奴は、女ってもんを知らなすぎる。そんなことをされて喜ぶのは、
『頭を撫でられて嬉しい相手に撫でられたら』
 って時だけだ。そうじゃねえ男から撫でられてなんで嬉しいと思うよ。そんなもんはただの<セクハラ>だ。わきまえろ。
 俺は、『男だから』とか『女だから』とかってえ理屈じゃ判断しないようにしてる。あくまでその当人を見るようにしてるんだ。
 まあ、その<当人>が最初とんでもなかったのが羅美なんだけどな。
 他にも、<男>ってだけで自分の狭い価値観に当てはめて決め付ける女も確かにいるが、別にそんなことはどうでもいい。そんな女に好かれようとも思わないし、関わろうとも思わない。職場にもその手の女子社員はいるが、どうせ仕事上で<社交辞令>だけで関わる相手だから何も言わない。
 ただの思い込みだけで『男なんてこんなもん』と決め付けてた羅美が、<パパ活女子高生を買うような男>ばかりを呼び寄せてたのと同じで、狭い価値観で主語をでかくするような奴がまともじゃない奴を呼び寄せたってそれは当人の責任だろ。好きにやらせときゃいいんだよ。
 勝手に口出しして干渉して、それでそいつの人生について責任負えんのか? 負えないよな? 自分の言ったとおりにしてそれで良くない方向に行ったら、結局は当人の責任にするんだろ? 
 イジメとかで他所様の家庭の事情とかを理由にしてイジメる奴もいるよな? そんな奴らが責任なんか取るか? 取らねえだろ。
 だったら最初から関わんな。関わるんなら最後まで責任を負え。
 それだけの話だ。
 だから俺も、俺の下から出て行くまでは責任を負うさ。

 俺に頭を撫でられて、羅美はまるで猫みたいな顔で喜んでた。だからついつい撫で続けてたら、
「って、しつこいわ! もういいっての!!」
 ってキレられた。
「ははは! すまんすまん。なんか可愛くて、つい」
 俺は笑顔になってしまう。
 牧島まきしまに言われたんだ。
「最近、なんか張り切ってない?」
 って。
「前はもっとこう、虚無ってたよね。仕方なく仕事してるってのが顔に滲み出てた」
「そ、そうか……?」
「そうだよ。離婚するずっと前からそんな感じだった。てか、うちの会社に入ってからすぐかな。結婚してからも変わんなかった気がする。だから家族が張り合いになってないんだなっていうのは分かった。それなのに今はやる気が見えてるんだよ。もしかして大虎のおかげ?」
「……そうかもな……」
 なんてやり取りもあった。
 そして牧島まきしまは訊いてきた。
「なら、コグマにとっても大虎は救いだったんじゃないの?」

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