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グルーミング

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 なんか最近、<グルーミング>って言葉が取り沙汰されてるよな。
『未成年に優しくしてやって信用させて依存させてその代わりに』
 ってやつ。
 まあ、俺がやってるのがまさしく<グルーミング>なんだろう。だから俺がやってることを正当化してもらおうとか思ってもねえよ。ただ、羅美に手を出すつもりはねえ。それだけの話だ。
 なにより、牧島まきしまも言ってた通り、羅美に手を出そうとすればこいつは俺を嫌うだろう。なにしろ俺に実の父親の姿を重ねてるみたいだからな。実の父親にそんなことされて娘が喜ぶか? んなわけねえだろ。
 実の父親とそんな関係になって喜ぶような娘なんざ、確実に『病んでる』。その状態は明らかにまともじゃねえだろ。俺でもそう思う。
 だから俺は、こいつが十八になるまでの<仮の父親>だ。それでいい。
 オムライスを笑顔で美味そうに食う羅美を見ながら、俺はしみじみそう思った。
 なにしろこれまた<子供の表情かお>なんだよ。こういう表情ができる大人がこいつの周りにはこれまでいなかったってことだろう。
『親の所為にすんな』
『環境の所為にすんな』
 だ? 何言ってやがる。それを言ってるてめえが、
『みんなネットで好き勝手言ってるから自分も』
 ってえことで、『他人の所為にして』『社会の所為にして』、赤の他人を攻撃してやがんだろうが! どんな言い訳並べようが、『他人の所為にして』『社会の所為にして』ることに変わりはねえよ。
 だから俺はこいつが『親の所為にする』のも『環境の所為にする』のも、赦す。
 今はな。
 ネットでいつまで経っても『他人の所為にして』『社会の所為にして』赤の他人を攻撃してる奴らみてえに学習しねえのはマズいから、<大人>になりゃあいつまでもそれじゃアレだしってのは分かってもらいてえけどよ。

 そんなこんなでファミレスで腹ごしらえして、店を出る。すると、俺の愛車の周りでスマホを構えてゲラゲラ笑ってる高校生くらいの奴らが三人ばかりいた。だから俺は、
「メットとゴーグル、着けとけ」
 羅美に言った。それに素直に従って、彼女はメットとゴーグルとマフラーで顔を隠してた。あんなのに写真撮られてネットにアップされでもしたらメンドクセえしな。
 だがそいつらは、俺達が歩いてくると、
「おい、行こうぜ」
 とか言ってそそくさと逃げちまった。ま、これもいつものことだ。こんな珍妙なクルマを見たらネットに上げてバズりたくもなるんだろう。
 そんなくだらねえことに血道を上げなきゃいけねえ人生なんて俺は興味ねえけどな。

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