第一〇七六四八八星辰荘へようこそ ~あるJC2の異種間交流~(セリフマシマシバージョン)

京衛武百十

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日常編

選択を背負っていくということ

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『なんでここに……』

シェルミに対しては、まだわだかまりが残っている。あれほどまでにコテンパンに言い負かされてしまったのだから無理もないだろう。ただ同時に、自分の狭隘さも理解はできていた、だからガゼは言った。頭を上げて、シェルミを真っ直ぐに見詰めて。

「私はそれでも、仲間を守りたいと思う……何が正解かなんて分からなくても、私は、自分が守りたい人を守る…! その為だったら、自分の手だって汚す……!」

それは、力を感じる言葉だった。強い意志を感じる言葉だった。現在のガゼの<想い>が込められた言葉だった。シェルミになんて言われてもいい。どう思われてもいい。自分にはそれでも守りたいものがある、という彼女の想いそのものが言葉になったものだった。

「ガゼちゃん……」

ユウカにも、ガゼの想いは伝わってきた。だから祈る思いでシェルミを見た。彼女の言葉にどう返すのかを、息を呑んで待った。

すると、水色っぽかったシェルミの目が、さらに淡い水色に代わるのが分かった。その瞬間、動かない筈のシェルミの顔にふわっと笑みが浮かんだようにも感じられた。

「…強くなりましたね、ガゼ。あなたがそこまでおっしゃるのでしたら、私はもう何も申しません。後はあなた自身がその言葉を守るだけです。

ガゼ…ユウカ…あなた方はあなた方の力で自らの人生を作り上げていくこととなります。あなた方の人生が素晴らしいものになることを、私は祈っています」

「シェルミさん……」

「……」

言葉もなく自分を見詰めるガゼとユウカに対し軽く会釈をし、

「それでは、私はまた務めがありますので」

と告げて、シェルミの姿は夜の闇へと消えていった。その背中に向けて、二人は深々と頭を下げる。

シェルミが何を伝えたかったのかは、正直なところはっきりと分かったとは言えなかった。けれど、

『ガゼちゃんのことを認めてくれたんだろうな……』

ということだけは感じられた気がして、何故かすっきりとした気分になっていた。

彼女が立派な人だというのは分かっている。訳もなく他人を腐したり貶めたりしない人だというのも分かっている。だから尊敬していた。それを改めて実感した気もする。

『人と人が完全に分かり合うことはできない……

寸分の狂いもなく意見が一致するということもない……

何が正解で何が間違いかなんて、前提条件が変わる度にひっくり返る……

だからその時その時で考えるしかないんだろうな……

そしてそれを一生続けるしかないんだ……

それが、どのような結果をもたらすとしても……』

二人はそのことを改めて感じたのだった。

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