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日常編
ユウカの決意
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なお、ユウカとヒロキが急接近するきっかけを作った当のラフタスはというと、
「最終的にどっちに決めるかなんて、そんなのユウカ自身が決めることだよ。私はただきっかけを作っただけ。
それにさ、最初に顔を合わせた時の反応からしていずれこうなることは変わりなかったと思うよ。だったら、ガゼとの関係が曖昧な今のうちにはっきりさせた方がいいのさ。結婚してからごたごたするよりはね」
とのことだった。無責任なようにも思えるかもしれないが、ラフタスの言うことにも一理ある。
だからユウカは決心した。
『うん、できることからやらなくちゃ…!』
ガゼとのことをはっきりさせる為にも、まずはヒロキの気持ちを確かめようと。
考えてみれば当然のことである。いくらユウカがヤキモキしたところで、これは相手がいる話なのだから、当事者の一人であるヒロキの気持ちを確かめないことには話にならない。
三日三晩、殆どガゼと言葉も交わさずに悶々とあれこれ考えた末の結論だった。
仕事が休みの日、ユウカはヒロキが手伝っているという喫茶店の前に立っていた。
とは言え、いざとなると足がすくんで動けない。
『うう…、こんなんじゃダメだよ……! はっきりさせなきゃいけないんだ……!』
恐らく、ここに来たばかりの頃なら、こうやって足を運ぶことすらできなかっただろう。結論を出すことを恐れて目を背けて逃げてしまっていたに違いない。ここまで来ることができただけでも大きな成長だった。そしてそれは、一緒の部屋にいるのに顔を合わすことさえできずにいるガゼの為にも今のままじゃないけないと思ってのことだった。
なのに、体が前に進まない。
と、不意に喫茶店のドアが開いた。
「来てくれたんだね。ありがとう。どうぞ入ってよ」
そう声を掛けられて、ユウカは、
『はあああああ~っ!』
と、パニックになってしまった。だからそれまで考えていた段取りの全てが吹っ飛んで、要点だけが口を吐いて出てしまった。
「私と、お付き合いするというのはアリですか…!?」
ヒロキもこれまで、いろんなものを心に抱えて苦しんできた人間を何人も見てきたことから、喫茶店のドアの前で一人懊悩しているユウカの姿を見てある程度は察していたのだった。あらかじめ答えを用意しておくくらいには。
「ありがとう。ユウカさんはとても素敵な女性だし僕をそんな風に見てくれてるのはとても嬉しい。だけど、僕はまだ、美嘉姉のことを愛してるんだ。今のところは、他の女性をそういう風には見られないかな」
「で、ですよね~…!」
紛うことなく完璧に百点満点でフラれたのであった。
部屋に戻ったユウカは、顔を合わせようとせずにただテレビの画面を見詰めていたガゼに言った。
「私、フラれちゃった……フラれちゃったよ、ガゼちゃん……」
ハッと振り返ったガゼの視線の先に、目にいっぱい涙をためたユウカの姿があった。
「ユウカ……」
そして二人で抱き合ってわんわん声を上げて、ユウカとガゼは泣いたのだった。
「最終的にどっちに決めるかなんて、そんなのユウカ自身が決めることだよ。私はただきっかけを作っただけ。
それにさ、最初に顔を合わせた時の反応からしていずれこうなることは変わりなかったと思うよ。だったら、ガゼとの関係が曖昧な今のうちにはっきりさせた方がいいのさ。結婚してからごたごたするよりはね」
とのことだった。無責任なようにも思えるかもしれないが、ラフタスの言うことにも一理ある。
だからユウカは決心した。
『うん、できることからやらなくちゃ…!』
ガゼとのことをはっきりさせる為にも、まずはヒロキの気持ちを確かめようと。
考えてみれば当然のことである。いくらユウカがヤキモキしたところで、これは相手がいる話なのだから、当事者の一人であるヒロキの気持ちを確かめないことには話にならない。
三日三晩、殆どガゼと言葉も交わさずに悶々とあれこれ考えた末の結論だった。
仕事が休みの日、ユウカはヒロキが手伝っているという喫茶店の前に立っていた。
とは言え、いざとなると足がすくんで動けない。
『うう…、こんなんじゃダメだよ……! はっきりさせなきゃいけないんだ……!』
恐らく、ここに来たばかりの頃なら、こうやって足を運ぶことすらできなかっただろう。結論を出すことを恐れて目を背けて逃げてしまっていたに違いない。ここまで来ることができただけでも大きな成長だった。そしてそれは、一緒の部屋にいるのに顔を合わすことさえできずにいるガゼの為にも今のままじゃないけないと思ってのことだった。
なのに、体が前に進まない。
と、不意に喫茶店のドアが開いた。
「来てくれたんだね。ありがとう。どうぞ入ってよ」
そう声を掛けられて、ユウカは、
『はあああああ~っ!』
と、パニックになってしまった。だからそれまで考えていた段取りの全てが吹っ飛んで、要点だけが口を吐いて出てしまった。
「私と、お付き合いするというのはアリですか…!?」
ヒロキもこれまで、いろんなものを心に抱えて苦しんできた人間を何人も見てきたことから、喫茶店のドアの前で一人懊悩しているユウカの姿を見てある程度は察していたのだった。あらかじめ答えを用意しておくくらいには。
「ありがとう。ユウカさんはとても素敵な女性だし僕をそんな風に見てくれてるのはとても嬉しい。だけど、僕はまだ、美嘉姉のことを愛してるんだ。今のところは、他の女性をそういう風には見られないかな」
「で、ですよね~…!」
紛うことなく完璧に百点満点でフラれたのであった。
部屋に戻ったユウカは、顔を合わせようとせずにただテレビの画面を見詰めていたガゼに言った。
「私、フラれちゃった……フラれちゃったよ、ガゼちゃん……」
ハッと振り返ったガゼの視線の先に、目にいっぱい涙をためたユウカの姿があった。
「ユウカ……」
そして二人で抱き合ってわんわん声を上げて、ユウカとガゼは泣いたのだった。
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