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日常編
夜の闇の中へ
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『ど…どうしよう……?』
ヒロキのことを明らかに意識しているユウカの様子にたまらなくなって一緒にシャワールームに入ってしまったガゼだったが、実はガゼ自身もここからどうすればいいのか分からなくなってしまった。
『怒ったらいいのかな…泣けばいいのかな……』
感情のままに喚き散らしてユウカを責めればいいのか、それとも自分の想いを切々と語って縋ればいいのか。
しかし、頭の中がまとまらなくてぐちゃぐちゃに混乱しているところに、
「ガゼちゃん…?」
とユウカが顔を寄せてきたことで、体の方が勝手に動いてしまったのだった。
「ん! むぅっ!?」
ガセの細い腕が首に回されてすごい力で引き寄せられ、ユウカは唇を奪われていた。思わず声が漏れそうになっても、塞がれていて声にならない。
『ガゼちゃん…!?』
突然のことに、ユウカの方もパニックになった。
思わず膝をつくと、ガゼの方が少しだけ背が高くなる。すると今度は覆いかぶさるようにしてさらに唇を押し付けられた。しかも、抱き締められてしまって身動きが取れない。
抵抗できなくなったユウカの唇を割り広げて、僅かにざらついたヌメっとしたモノが押し入ってくる。
ガゼの舌だった。それがユウカの舌を絡めとって貪るように弄ぶ。その瞬間、ユウカの背筋を電流のようなものが走り抜けた。それに脳を撃たれて体中の力が抜けてしまいそうになる。
『このまま身を任せてしまってもいいかな……』
って気持ちになった。
だが―――――
「!?」
だが、ガゼの右手が自分の胸に触れるのを感じると、ユウカはハッと我に返った。そして反射的に、ガゼの体を押し退けてしまった。
「ガゼちゃん…イヤだ……ガゼちゃんのことは好きだけど、こういうのはイヤ……!」
目にいっぱい涙をためて、顔を逸らしたままユウカは言った。
そんなユウカの姿を見て、ガゼは、
「……! ごめん!!」
と声を上げて、裸のままで、シャワールームからどころか部屋のドアまで開けて飛び出していってしまった。
「ガゼちゃん!!」
慌てたユウカがバスタオルを巻いて部屋のドアを開けて外を見たが、そこにはもうガゼの姿はなかった。まさかと思って窓を開けて外を見ても、やはり見付けることはできなかった。
裸の上にワンピースだけを着て、頭も濡れたままでユウカはアパートの外に出た。
「ガゼちゃん!」
ガゼの名を呼ぶが、返事はなかった。濡れた髪から水滴が滴り、ワンピースを濡らす。しかしユウカはそれさえ構わず、さらに「ガゼちゃん!」と声を上げながら夜の闇の中へと走り出したのだった。
ヒロキのことを明らかに意識しているユウカの様子にたまらなくなって一緒にシャワールームに入ってしまったガゼだったが、実はガゼ自身もここからどうすればいいのか分からなくなってしまった。
『怒ったらいいのかな…泣けばいいのかな……』
感情のままに喚き散らしてユウカを責めればいいのか、それとも自分の想いを切々と語って縋ればいいのか。
しかし、頭の中がまとまらなくてぐちゃぐちゃに混乱しているところに、
「ガゼちゃん…?」
とユウカが顔を寄せてきたことで、体の方が勝手に動いてしまったのだった。
「ん! むぅっ!?」
ガセの細い腕が首に回されてすごい力で引き寄せられ、ユウカは唇を奪われていた。思わず声が漏れそうになっても、塞がれていて声にならない。
『ガゼちゃん…!?』
突然のことに、ユウカの方もパニックになった。
思わず膝をつくと、ガゼの方が少しだけ背が高くなる。すると今度は覆いかぶさるようにしてさらに唇を押し付けられた。しかも、抱き締められてしまって身動きが取れない。
抵抗できなくなったユウカの唇を割り広げて、僅かにざらついたヌメっとしたモノが押し入ってくる。
ガゼの舌だった。それがユウカの舌を絡めとって貪るように弄ぶ。その瞬間、ユウカの背筋を電流のようなものが走り抜けた。それに脳を撃たれて体中の力が抜けてしまいそうになる。
『このまま身を任せてしまってもいいかな……』
って気持ちになった。
だが―――――
「!?」
だが、ガゼの右手が自分の胸に触れるのを感じると、ユウカはハッと我に返った。そして反射的に、ガゼの体を押し退けてしまった。
「ガゼちゃん…イヤだ……ガゼちゃんのことは好きだけど、こういうのはイヤ……!」
目にいっぱい涙をためて、顔を逸らしたままユウカは言った。
そんなユウカの姿を見て、ガゼは、
「……! ごめん!!」
と声を上げて、裸のままで、シャワールームからどころか部屋のドアまで開けて飛び出していってしまった。
「ガゼちゃん!!」
慌てたユウカがバスタオルを巻いて部屋のドアを開けて外を見たが、そこにはもうガゼの姿はなかった。まさかと思って窓を開けて外を見ても、やはり見付けることはできなかった。
裸の上にワンピースだけを着て、頭も濡れたままでユウカはアパートの外に出た。
「ガゼちゃん!」
ガゼの名を呼ぶが、返事はなかった。濡れた髪から水滴が滴り、ワンピースを濡らす。しかしユウカはそれさえ構わず、さらに「ガゼちゃん!」と声を上げながら夜の闇の中へと走り出したのだった。
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