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日常編

若いな~。青春だな~

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「僕は、この近所で喫茶店を経営してる友達を手伝うために先日引っ越ししてきたんだ。彼の淹れるコーヒーは絶品なんだけど、超が付くほどの人見知りで接客ができなくてね。それを僕が代わりにすることになると思う。

もしよかったらご馳走するし、気軽に来てくれたらいいよ」

そう言いながらフワッと微笑んだ彼の顔を、ユウカはぼーっと見詰めてしまった。

そうなると、当然、ガゼは面白くない。

『む~…気に入らない……』

だが、その場で噛み付いて場の空気を悪くするほどは彼女ももう幼くなかった。それでも、食事を終えてヒロキと別れてアイアンブルーム亭を出る時にはひどく不機嫌そうな顔になってしまっていた。

ユウカがヒロキに見惚れていたことやガゼの様子に、ラフタスが、

「若い、若いな~。青春だな~」

とニヤニヤしていた。外見上は十代後半に見えても、既に数百年をここで過ごして十三人もの子供を育ててきた彼女にとってはむず痒いような空気感だったのだ。

そんなラフタスに、いい感じに酔っぱらった常連の一人が、

「ラフタスももうおばちゃんってことかね~」

などとゲラゲラ笑いながら声を掛けると、

「殺すぞ…!」

と、引きつった笑いを浮かべながらラフタスは応えたのだった。



まあそんな余談はさておいて、ガゼと一緒にアパートへ帰ったユウカは、

「先にシャワー浴びるね…!」

と、火照ったように赤くなった頬を押さえながらそそくさとシャワールームに入ってしまった。

それを見たガゼは明らかに拗ねたような顔をして、服を脱ぎ始める。そしてシャワールームのドアを開けて、

「え? なに? ガゼちゃん…!」

と戸惑うユウカに構うことなく一緒に入ってしまったのだった。

一緒に入るといろいろ我慢ができなくなってしまうので、普段は別々に入るようにしていたのだ。だが今日は、それ自体が我慢できなかった。

「え~っと……もしかして怒ってる……?」

しかめっ面で自分を睨み付けるガゼに、ユウカはシャワーを浴びたままで問い掛けた。正直、心当たりはあった。ヒロキのことを意識してしまってる自分に対して怒ってるのだと思った。

ただ、ここで『ごめんなさい』と謝るのも違う気がした。ヒロキのことは確かに素敵な人だと思ってしまったが、だからといって別にどうこういう訳でもない。好きだとか付き合いたいとかそんなことも別に今のところは考えていなかった。

だが、ユウカの方はそうだったかもしれないが、ガゼにとってはユウカがヒロキに見惚れていたことがもう既に大問題なのだった。

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