第一〇七六四八八星辰荘へようこそ ~あるJC2の異種間交流~(セリフマシマシバージョン)

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
93 / 205
転生編

ユウカがここに来て知ったこと

しおりを挟む
『ヘルミさん……』

湯船にゆっくりとつかりながら、ユウカはヘルミのことを考える。

『ヘルミさんはどうしてあんなに他人を嫌うんだろ…?

私も地球にいた頃はそうだったな……<自分以外の人>っていうだけで怯えて勝手に不安になって……

でもここに来てからはそれもすっごくマシになった気がする。みんなが優しいから……

なのにヘルミさんにはそういうのないのかなあ……』

だが同時に、ユウカはこう考えるようになっていた。

『私はヘルミさんじゃないから、ヘルミさんの本当の気持ちって分かるはずないよね……』

と。

残念なことではあるが、ユウカのその認識は正しいだろう。他人の気持ちを完全に理解できるなどということは有り得ない。

勝手に想像したそれを本人に無断で当てはめて分かったような気になっているだけだ。

他人の内心を客観的に観測できる機器も手段もないのだから。

ユウカは、ここに来て気持ちに余裕が持てるようになったことで逆にそれを認めることができるようになった。

以前は分からないと思っていることを他人に知られるとそれを責められるんじゃないかと恐れていて、本当は分かっていないのにそう言えなかったというのもあったのだ。

だがここでは、生物として根本的に違う者が当たり前のように一緒に暮らしている。同じアパートにいる、不定形生物のヌラッカや機械生命体のシェルミがそうだ。

不定形生物のヌラッカには、形状や形質が固定された人間の感覚が理解できない。

不都合があればそれに合わせて自分の形質そのものを変えてしまえるのだから、<状況に応じて自分の形を変えることができない不便さ>というものが理解できないのである。

そして、ヌラッカがそれを理解できないことが、形状が固定された人間には理解できない。彼女のことを愛しているキリオでさえも理解はできていないだろう。キリオはただ、ヌラッカのありのままを愛しているだけだ。

機械生命体のシェルミもそうだ。有機生命体であるが故の非効率さや不便さが彼女には理解できない。

知識としては持っていても、感覚的には分かっていない。そして、生活のための空間をほとんど必要としないからといって部屋の半分をランジェリーショップにしてしまうような感覚は、ユウカたちには理解できない。

だが、それでいい。それでいいのだ。互いに違い、相手の全てが理解できるわけではないということを理解することから、本当の相互理解が始まる。自分の考えを一方的に相手に押し付けるのは逆に非合理的であるということを知る。自分の存在を認めてもらうためには、他者の存在を認める必要があるのだということを知る。

ここはそういう風に成り立っているのだから。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

処理中です...