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転生編
恐怖との邂逅
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「あ、ユウカも来たの?」
折れそうになる自身の心にムチ打って夢中で足を動かし、ストレージを買うために行くつもりだったPCパーツショップに着いた時、不意にそう声を掛けられた。
思わずその声の方に目を向けると、そこには見慣れた姿があった。ガゼだ。ガゼが嬉しそうにこちらを見て手を振っていた。
だが、その顔はみるみる険しいものになっていく。
「どうしたの…!?」
声は決して大きくないが、固く力の込められた言葉がユウカに投げ掛けられた。ユウカの表情が尋常ではないことに気付いたからだ。怯えきって青白くなり、涙ぐんでさえいる。明らかに不穏なそれだった。
「あ、ガゼちゃん。大丈夫、何でもないから…」
何でもないとは言うものの、その姿はとてもそうは見えなかった。なにしろ不安そうに後ろを振り返り、何かを確かめようとしていたのだから。
「何でもないって、何でもなくてそんな顔になる? なに? チカンでも出たの…?」
滅多にそんなものも出ないが、ごくたまに、酔っぱらってガゼに無礼を働こうとしたゴビーのようなことをしでかす者はいる。ウブなユウカにとってはそういう者も大きな恐怖になるだろう。一応は二十五歳であるガゼにもそのくらいのことは分かる。
だから、ユウカに無礼を働く輩がいるとするなら、それは許せることではなかった。
『いったい、どこのどいつ!? 私のユウカにふざけたマネしてくれるのは…!?』
ユウカを庇うように立ち、ガゼは周囲を見回した。
「!?」
だがその時、ゾクリとしたものがガゼの背筋を奔り抜けた。すると、さっきまで間違いなく何もいなかったはずの、ガゼとユウカのすぐ脇に、真っ黒な人影があったのだった。
「フシュッッ!!」
短く鋭い呼気を発しつつ、ガゼは反射的にそいつの腹目掛けて容赦ない正拳を突き出していた。
いくら何でも出会い頭にそれはマズいという一撃だったが、距離もタイミングも申し分なかったはずのそれは、まるで手応えなくそいつの腹に僅かに触れた程度だった。間合いは確実だったはずだ。なのに、腕が伸び切って威力が全くなくなったところでようやく触れたのである。
『バカな…っ!?』
自分が間合いを図り損ねるなど有り得ないと、ガゼの顔が驚愕のそれになった。それと同時に、全身から汗が噴き出した。冷たい汗だ。恐怖を感じた時に出るそれだった。
ガゼの頭上、はるかに高いところから、蝋細工のように白く無機質な顔と、血のように赤く、それでいて全く感情というものが読み取れない冷たい瞳が彼女を見下ろしていた。
『ダメだ…私はこいつに勝てない…!』
一目見て分かった。ガゼは非常に優れた格闘者である。だからこそ、相手の力もある程度は読み取れてしまうのだ。それが本能のレベルで危険を伝えてきた。こいつは強い。しかもその強さの底が全く測れない。それが分かってしまった。
それでも彼女は諦めなかったのだった。ユウカを守る為に。
折れそうになる自身の心にムチ打って夢中で足を動かし、ストレージを買うために行くつもりだったPCパーツショップに着いた時、不意にそう声を掛けられた。
思わずその声の方に目を向けると、そこには見慣れた姿があった。ガゼだ。ガゼが嬉しそうにこちらを見て手を振っていた。
だが、その顔はみるみる険しいものになっていく。
「どうしたの…!?」
声は決して大きくないが、固く力の込められた言葉がユウカに投げ掛けられた。ユウカの表情が尋常ではないことに気付いたからだ。怯えきって青白くなり、涙ぐんでさえいる。明らかに不穏なそれだった。
「あ、ガゼちゃん。大丈夫、何でもないから…」
何でもないとは言うものの、その姿はとてもそうは見えなかった。なにしろ不安そうに後ろを振り返り、何かを確かめようとしていたのだから。
「何でもないって、何でもなくてそんな顔になる? なに? チカンでも出たの…?」
滅多にそんなものも出ないが、ごくたまに、酔っぱらってガゼに無礼を働こうとしたゴビーのようなことをしでかす者はいる。ウブなユウカにとってはそういう者も大きな恐怖になるだろう。一応は二十五歳であるガゼにもそのくらいのことは分かる。
だから、ユウカに無礼を働く輩がいるとするなら、それは許せることではなかった。
『いったい、どこのどいつ!? 私のユウカにふざけたマネしてくれるのは…!?』
ユウカを庇うように立ち、ガゼは周囲を見回した。
「!?」
だがその時、ゾクリとしたものがガゼの背筋を奔り抜けた。すると、さっきまで間違いなく何もいなかったはずの、ガゼとユウカのすぐ脇に、真っ黒な人影があったのだった。
「フシュッッ!!」
短く鋭い呼気を発しつつ、ガゼは反射的にそいつの腹目掛けて容赦ない正拳を突き出していた。
いくら何でも出会い頭にそれはマズいという一撃だったが、距離もタイミングも申し分なかったはずのそれは、まるで手応えなくそいつの腹に僅かに触れた程度だった。間合いは確実だったはずだ。なのに、腕が伸び切って威力が全くなくなったところでようやく触れたのである。
『バカな…っ!?』
自分が間合いを図り損ねるなど有り得ないと、ガゼの顔が驚愕のそれになった。それと同時に、全身から汗が噴き出した。冷たい汗だ。恐怖を感じた時に出るそれだった。
ガゼの頭上、はるかに高いところから、蝋細工のように白く無機質な顔と、血のように赤く、それでいて全く感情というものが読み取れない冷たい瞳が彼女を見下ろしていた。
『ダメだ…私はこいつに勝てない…!』
一目見て分かった。ガゼは非常に優れた格闘者である。だからこそ、相手の力もある程度は読み取れてしまうのだ。それが本能のレベルで危険を伝えてきた。こいつは強い。しかもその強さの底が全く測れない。それが分かってしまった。
それでも彼女は諦めなかったのだった。ユウカを守る為に。
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