第一〇七六四八八星辰荘へようこそ ~あるJC2の異種間交流~(セリフマシマシバージョン)

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
81 / 205
転生編

自分の行く先々に現れ無言で見詰めてくる邪神。怖いです

しおりを挟む
「さ、さようなら」

自分を見詰めるカハ=レルゼルブゥアに気付き、ユウカは思わず改めて頭を下げた。とてもそうは見えなかったが、

『見送ってくれてるのかも…』

と考えたからだ。

しかし、カハ=レルゼルブゥアの方には全く変化が見られなかった。ただこちらを見詰めてくるだけである。念の為にもう一度頭を下げてから、ユウカは背を向けて歩き出した。

しばらく行ったところでそっと振り返ってみると姿が見えなくなっていたことで、

『やっぱり見送ってくれただけなんだ……』

と胸を撫で下ろした。だが、改めて前を向いて歩き出そうとして、足が止まってしまう。

「…え?」

思わず声を漏らした彼女の視線の先に、黒い人影が見えていたのだ。蝋細工のような白い無機質な顔と真っ赤な瞳がそこにはあった。紛れもなくそれは、カハ=レルゼルブゥアだ。

『なに…? どういうこと…? 私、何かしちゃったのかな…?』

混乱する頭でそういうことを考えていたユウカだったが、答えが出る筈もなく、どうしていいかも分からないまま恐る恐る歩き出して、軽く会釈をしながらその前を通り過ぎた。

だが、カハ=レルゼルブゥアは特に何かしてくるでもなく声を掛けるでもなく、ただユウカのことを見ているだけだった。それがまた意味不明で、ユウカの頭はますます混乱していた。

『なんなんだろう……?』

ここでは、体の傷が治るのと同じで、たとえ時間はかかっても心の傷も必ず治る。そもそも無限と言っていいほど時間があるのだから当然だろう。また、脳そのものが損傷したとしてもむしろその方が体の傷と同じくきちんと回復するので、発狂するということもない。とは言え恐怖は感じるし不安も感じる。相手がただの人間であってもこんなことをされたら普通は怖い。しかもそれが邪神だというんだからその恐怖は尋常ではなかった。いくら『死なない』と言われても、それを完全に実感するには彼女はまだ経験が浅すぎた。だから怖い。

『なんなの、なんなの、なんなの……!?』

なるべく平静を装おうとしても、無意識に足が速くなる。とにかくこの場から逃げたいという気持ちが無意識のうちに体を動かしていた。なのに……

「―――ひっっ…!!」

もう後ろは振り向くまいと心に決めて歩いた先に、またそれはいたのだった。カハ=レルゼルブゥアだ。まるで感情を感じさせない、冷たいのに燃えるように赤い瞳が、真っ直ぐにユウカを捉えていた。

『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…!』

何が悪かったのか何に謝っているのか彼女自身にも分からなかったがとにかくそう心の中で何度も謝りながら、彼女は早足で歩き続けたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...