84 / 205
転生編
ヘルミVSカハ=レルゼルブゥア…?
しおりを挟む
「そいつは邪神だ。人間が勝てるとか思ってんのかバカが!」
カハ=レルゼルブゥアを相手に決死の一撃を浴びせようとしていたガゼを、ヘルミが一喝する。
「!?」
それにより体の中で練り上げていた力がまとまりを失い、ガゼは攻撃に移るきっかけを失ってしまったのだった。しかも、
『邪神…だと……?』
自分が正対していた相手が『邪神』と聞いて、全身にいっそう冷たい汗が噴き出してくるのを感じていた。彼女の惑星でも、邪神の脅威は魂にまで刻み込まれるほどに知られていたのである。
「……!」
言葉も出せずにカハ=レルゼルブゥアを見上げるガゼにはもう構わず、ヘルミが声を発した。
「久しぶりだな…」
それに、ここまで一言も発してこなかったカハ=レルゼルブゥアが呟くように、
「お前か…」
と応える。
『え? なに? お知り合い…?』
状況が理解出来ず混乱するユウカの前で、今度はヘルミとカハ=レルゼルブゥアとの間で緊張感が高まっていくのを感じた。
それを見てユウカもアーシェスが言っていたことを思い出す。
『ヘルミの惑星では、邪神に対抗するために強い魔法使いを育てようとしてたの』
という話を。だとしたら、邪神のことをよく知ってても当然かもしれないし、邪神に対する強い感情も当然かもしれない。
しかし―――――
『無茶だよ…勝てるわけないよ……!』
あのバーで見た光景を思い出すと、いくらヘルミが魔法使いだとしてもとても勝てる相手だとは思えなかった。魔法を使える程度の人間が敵うような存在だとは思えなかったのだ。そしてそれは事実だった。魔法だろうと科学だろうと、邪神そのものを滅ぼそうとして成功した事例は一つとしてなかったのだ。せいぜい、封印して一時的に退けるくらいである。
「……」
「……」
一言も発することなく睨み合う二人の間で、ガラスのように手で触れられそうなくらいに空気が硬く張り詰めていくのがユウカにも察せられた。
そしてそれに亀裂が入りそうな気がした瞬間、彼女の体が勝手に動いていた。
「だめえっ! ヘルミさん死んじゃうっっ!!」
自分でも気付かぬうちにそう叫んで、彼女はヘルミに抱きつくようにして止めようとしたのだった。実はガゼの時にもそうなりかけたが、その寸前にヘルミが割り込んできたのである。
「ムリだよぉ…ヘルミさん死んじゃうよぉ……もうやめてよぉ……」
ユウカは、ヘルミの体に抱きついたまま泣いていた。幼い子供が駄々をこねるように何度も何度も懇願しながら。その様子を例の無機質な顔で見ていたカハ=レルゼルブゥアが、静かに声を発した。
「心配要らない…彼女は、私のバンドの元メンバーだから……」
「……はい…?」
カハ=レルゼルブゥアが発したあまりに思いがけない言葉に、ユウカもガゼも、呆然とするしかできなかったのだった。
カハ=レルゼルブゥアを相手に決死の一撃を浴びせようとしていたガゼを、ヘルミが一喝する。
「!?」
それにより体の中で練り上げていた力がまとまりを失い、ガゼは攻撃に移るきっかけを失ってしまったのだった。しかも、
『邪神…だと……?』
自分が正対していた相手が『邪神』と聞いて、全身にいっそう冷たい汗が噴き出してくるのを感じていた。彼女の惑星でも、邪神の脅威は魂にまで刻み込まれるほどに知られていたのである。
「……!」
言葉も出せずにカハ=レルゼルブゥアを見上げるガゼにはもう構わず、ヘルミが声を発した。
「久しぶりだな…」
それに、ここまで一言も発してこなかったカハ=レルゼルブゥアが呟くように、
「お前か…」
と応える。
『え? なに? お知り合い…?』
状況が理解出来ず混乱するユウカの前で、今度はヘルミとカハ=レルゼルブゥアとの間で緊張感が高まっていくのを感じた。
それを見てユウカもアーシェスが言っていたことを思い出す。
『ヘルミの惑星では、邪神に対抗するために強い魔法使いを育てようとしてたの』
という話を。だとしたら、邪神のことをよく知ってても当然かもしれないし、邪神に対する強い感情も当然かもしれない。
しかし―――――
『無茶だよ…勝てるわけないよ……!』
あのバーで見た光景を思い出すと、いくらヘルミが魔法使いだとしてもとても勝てる相手だとは思えなかった。魔法を使える程度の人間が敵うような存在だとは思えなかったのだ。そしてそれは事実だった。魔法だろうと科学だろうと、邪神そのものを滅ぼそうとして成功した事例は一つとしてなかったのだ。せいぜい、封印して一時的に退けるくらいである。
「……」
「……」
一言も発することなく睨み合う二人の間で、ガラスのように手で触れられそうなくらいに空気が硬く張り詰めていくのがユウカにも察せられた。
そしてそれに亀裂が入りそうな気がした瞬間、彼女の体が勝手に動いていた。
「だめえっ! ヘルミさん死んじゃうっっ!!」
自分でも気付かぬうちにそう叫んで、彼女はヘルミに抱きつくようにして止めようとしたのだった。実はガゼの時にもそうなりかけたが、その寸前にヘルミが割り込んできたのである。
「ムリだよぉ…ヘルミさん死んじゃうよぉ……もうやめてよぉ……」
ユウカは、ヘルミの体に抱きついたまま泣いていた。幼い子供が駄々をこねるように何度も何度も懇願しながら。その様子を例の無機質な顔で見ていたカハ=レルゼルブゥアが、静かに声を発した。
「心配要らない…彼女は、私のバンドの元メンバーだから……」
「……はい…?」
カハ=レルゼルブゥアが発したあまりに思いがけない言葉に、ユウカもガゼも、呆然とするしかできなかったのだった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる