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転生編

優しさと厳しさと

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ミスをした当人に対して罵倒することを当然のことだと思っている人間は多いだろう。しかし、ハルマはそうは思わなかった。なにしろ、ミスを痛罵された同僚が仕事に来なくなったことで負担が増加。それがもとで疲労がたまり、帰宅途中に立ちくらみを起こした彼は階段から転落、頭を強く打ってそのまま亡くなってしまったのである。

そうして書庫ここに来ることになったという訳だ。

こう言うと、仕事に来なくなった同僚が悪いと言う人間も多いに違いない。だがそれは本当だろうか? ミスをした時などは厳しく叱責するべきだというのは、<加害者の論理>ではないのだろうか?

具体的な指示を出せば済むところを罵詈雑言を浴びせるのは、ただ自分がすっきりしたいだけではないのか?

『ミスをしたことを怒鳴られた程度で仕事に来なくなるとか、そんな奴に仕事とかできるかよ』

そんなことを言うかもしれないが、それが本当のことだとどうやって証明するというのだろう?

論理的に冷静に話をすることができないから相手を罵る者に、そのような証明ができる筈もないのに。それが証明できるほど客観的な事実を論理的に述べることができるなら、別に相手を罵らなくても諭すことができるのではないのか?

それができないから罵るのではないのか?

ましてや相手の人格を否定したり、それどころか親まで侮辱するとか、真っ当な感覚を持っている者ならそれが好ましいことじゃないと分かる筈ではないだろうか。

ハルマはそう考えるからこそ、ミスがあったからと言って怒鳴ったりはしない。ただ同じミスをしないように促すだけだ。もしそれで反省しないような人物なら、配置転換をするか、どうしても改める気がないということなら、解雇するということもある。

彼はこの書店の店長としてそのくらいの覚悟は持っている。ただし、それを濫用することもない。厳しさも持ち合わせているが、理不尽なことはしない。ただそれだけの話である。

そういう点でも、最初にこの店をユウカに紹介したアーシェスはさすがと言うべきかも知れない。彼女に合いそうな仕事を見繕ってくれたのだから。

とは言え、そんなアーシェスでもヘルミについては手を焼いてしまう。それほど人間の心理というのは一筋縄ではいかないということだろう。

ユウカは今、自然とそのようなことについても学べる環境にいた。

彼女の両親はただ彼女を支配し操ることしか考えてなかったが、それでは人間は上手くは動かせない。ユウカがひどく自己評価の低い人間に育ってしまった事実がそれを物語っていると言えるのだろう。これから彼女は、そういう自分を改めて自ら育てていくことになるのだ。
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