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転生編
メジェレナの過去
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洗濯が終わるのを待っていると、メジェレナが洗濯カゴを持ってコインランドリーに入ってきた。
「こんばんは」
挨拶されてユウカがいることに気付くと、メジェレナも、
「こ、こんばんは」
と返事をしてくれる。
照明の下でもやはり褐色の肌のためかよく分からなかったが、メジェレナは確かに顔が赤くなっていた。ユウカを意識してるのだということに、勘のいい人間なら気付くだろうが、残念ながらユウカには伝わらなかった。
「お洗濯ですか?」
と、さすがに慣れてきたからか笑顔さえ浮かべてユウカは話しかけることができた。
「はい……」
少しだけはにかんだ感じでメジェレナは応えたが、ユウカはそれに気付かなかったのか、様子に特に変化はなかった。メジェレナのことは単に親切で優しいお隣さんと認識してるのが分かる。
『よかった……』
自分がユウカのことを意識していると悟られなかったことに、メジェレナはホッと胸を撫で下ろした。
さりとて、メジェレナのそれが恋愛感情などを示唆したものかと問われればそれは必ずしもそうとは限らないので、ユウカが気付かずにスルーしてくれるなら、そのうち落ち着くと思われる。
事実、少し落ち着くとメジェレナも加わって三人で普通に会話ができた。それは、メジェレナがここに来ることになったきっかけの話だ。
「私が二千年も引きこもってたのは、元居た世界で酷い適応障害を起こしてたからなんだ。しかも周りはそれを許してくれなくて、それで自分でね……」
「そうだったんですか……」
ユウカが悲しそうに顔を歪めた。
アーシェスやヘルミのそれに比べれば些細にも思えることかもしれないが、それでもメジェレナにとっては辛く苦しい過去だった。
「ここに来てからもなかなか馴染めなくて、だから何度も自殺しようとしたけど死ねなくて……
そんな私を、前に八号室に住んでた人が面倒見てくれたんだ。でも結局、二千年もかかっちゃった……」
「……」
「それでも何とか外に出られるようになってきて、仕事も見付けられて自分で生活できるようになったら、その人は『旅に出る』って言ってアパートを出ていったんだ。
その人がどうして私のことを気にしてくれてたのかって言ったら、その人にも、私と同じようにして自分で命を絶った娘さんがいて、娘さんの後を追うようにしてその人も命を絶ったからなんだって。
だけど娘さんはここにはいなくて、落ち込んでたところに私が来て、守ってあげられなかった娘さんの代わりにってことだったみたい。
それで、立ち直った私を見て、その人も娘さんがもしかしたら別の場所にいるかもしれないと思えるようになって、それを探す為に旅に出ることにしたって……」
「こんばんは」
挨拶されてユウカがいることに気付くと、メジェレナも、
「こ、こんばんは」
と返事をしてくれる。
照明の下でもやはり褐色の肌のためかよく分からなかったが、メジェレナは確かに顔が赤くなっていた。ユウカを意識してるのだということに、勘のいい人間なら気付くだろうが、残念ながらユウカには伝わらなかった。
「お洗濯ですか?」
と、さすがに慣れてきたからか笑顔さえ浮かべてユウカは話しかけることができた。
「はい……」
少しだけはにかんだ感じでメジェレナは応えたが、ユウカはそれに気付かなかったのか、様子に特に変化はなかった。メジェレナのことは単に親切で優しいお隣さんと認識してるのが分かる。
『よかった……』
自分がユウカのことを意識していると悟られなかったことに、メジェレナはホッと胸を撫で下ろした。
さりとて、メジェレナのそれが恋愛感情などを示唆したものかと問われればそれは必ずしもそうとは限らないので、ユウカが気付かずにスルーしてくれるなら、そのうち落ち着くと思われる。
事実、少し落ち着くとメジェレナも加わって三人で普通に会話ができた。それは、メジェレナがここに来ることになったきっかけの話だ。
「私が二千年も引きこもってたのは、元居た世界で酷い適応障害を起こしてたからなんだ。しかも周りはそれを許してくれなくて、それで自分でね……」
「そうだったんですか……」
ユウカが悲しそうに顔を歪めた。
アーシェスやヘルミのそれに比べれば些細にも思えることかもしれないが、それでもメジェレナにとっては辛く苦しい過去だった。
「ここに来てからもなかなか馴染めなくて、だから何度も自殺しようとしたけど死ねなくて……
そんな私を、前に八号室に住んでた人が面倒見てくれたんだ。でも結局、二千年もかかっちゃった……」
「……」
「それでも何とか外に出られるようになってきて、仕事も見付けられて自分で生活できるようになったら、その人は『旅に出る』って言ってアパートを出ていったんだ。
その人がどうして私のことを気にしてくれてたのかって言ったら、その人にも、私と同じようにして自分で命を絶った娘さんがいて、娘さんの後を追うようにしてその人も命を絶ったからなんだって。
だけど娘さんはここにはいなくて、落ち込んでたところに私が来て、守ってあげられなかった娘さんの代わりにってことだったみたい。
それで、立ち直った私を見て、その人も娘さんがもしかしたら別の場所にいるかもしれないと思えるようになって、それを探す為に旅に出ることにしたって……」
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