49 / 205
転生編
ヘルミの過去
しおりを挟む
ユウカと一緒に彼女の部屋に戻ったアーシェスは、
「回鍋肉いただくね」
と言って冷蔵庫からタッパーを取りだし中身をフライパンにあけ、コンロの火にかけ温める。ユウカはテーブルに着いてそんなアーシェスを黙って見ているしかできない。するとアーシェスが静かに語り始めた。
「さっきも言ったけど、ヘルミは信頼していた人に裏切られて命を落としてここに来たの。だからあんなに気持ちが荒んでしまってるんだっていうのは私にも分かる…」
「……」
「彼女はね、昔は魔法使いだったんだよ」
「…ま、魔法使い…? ヘルミさんが…?」
言われてみればあの部屋のおどろおどろしい雰囲気とか、イメージが無いというわけではないが、それでもどうにも結びつかなかった。
『魔法使いって言われたら、やっぱりあの映画とかアニメの魔法少女とかってイメージかなあ…』
それがユウカの思う<魔法使い>だったからだ。
そんなユウカをよそに、アーシェスは言葉を続ける。
「彼女の惑星の魔法使いというのは、クォ=ヨ=ムイのような<邪神>に対抗するために強い魔法使いを育てようとしてたの。でもそれが行き過ぎて、魔法使い同士で殺し合いをして生き延びた者をさらに鍛え上げるっていうことまでしてた」
「……!」
そこまで言われて、ユウカは思わず息を呑んだ。自分が思っていたものとはかなり違っているように感じたからだ。
『魔法使い同士で殺し合い…?』
そう思った時、ユウカの頭にハッとひらめくものがあった。
「まさか、魔法使い同士でって…?」
そう問い掛けたユウカに、振り返ったアーシェスが静かに頷いた。
「そうよ……ヘルミは、魔法使い同士の殺し合いで殺されたの。しかも、彼女が信頼し、守りたいと思った人にね…」
「……!」
ユウカは言葉もなかった。そんなことがあったのなら、あの様子も無理ないと思ってしまう。アーシェスはさらに続けた。
「ヘルミはその人を守って戦った。その人はすごく優しくてとても戦いには向いてない人だったから。彼女はその人を守りたかった。でも…」
「……」
「でも、それは全て、その人の狙いだったのね……優しくて思いやりがあってってすれば自分を守ってくれる人が現れるっていう狙いだったの。そしてヘルミは完全にそれに乗せられてしまった。その人を守って戦い抜いて二人だけになったヘルミはホッとして、その人に抱かれて眠ってしまった。だけど、彼女はそのまま永遠の眠りにつかされて、それでここに来たのよ。しかも、そのことを彼女も知ってる。命が尽きる直前、一瞬だけ意識が戻って全てを察してしまったから……」
「そんな……」
それを聞かされたユウカの目に、涙が光っていたのだった。
「回鍋肉いただくね」
と言って冷蔵庫からタッパーを取りだし中身をフライパンにあけ、コンロの火にかけ温める。ユウカはテーブルに着いてそんなアーシェスを黙って見ているしかできない。するとアーシェスが静かに語り始めた。
「さっきも言ったけど、ヘルミは信頼していた人に裏切られて命を落としてここに来たの。だからあんなに気持ちが荒んでしまってるんだっていうのは私にも分かる…」
「……」
「彼女はね、昔は魔法使いだったんだよ」
「…ま、魔法使い…? ヘルミさんが…?」
言われてみればあの部屋のおどろおどろしい雰囲気とか、イメージが無いというわけではないが、それでもどうにも結びつかなかった。
『魔法使いって言われたら、やっぱりあの映画とかアニメの魔法少女とかってイメージかなあ…』
それがユウカの思う<魔法使い>だったからだ。
そんなユウカをよそに、アーシェスは言葉を続ける。
「彼女の惑星の魔法使いというのは、クォ=ヨ=ムイのような<邪神>に対抗するために強い魔法使いを育てようとしてたの。でもそれが行き過ぎて、魔法使い同士で殺し合いをして生き延びた者をさらに鍛え上げるっていうことまでしてた」
「……!」
そこまで言われて、ユウカは思わず息を呑んだ。自分が思っていたものとはかなり違っているように感じたからだ。
『魔法使い同士で殺し合い…?』
そう思った時、ユウカの頭にハッとひらめくものがあった。
「まさか、魔法使い同士でって…?」
そう問い掛けたユウカに、振り返ったアーシェスが静かに頷いた。
「そうよ……ヘルミは、魔法使い同士の殺し合いで殺されたの。しかも、彼女が信頼し、守りたいと思った人にね…」
「……!」
ユウカは言葉もなかった。そんなことがあったのなら、あの様子も無理ないと思ってしまう。アーシェスはさらに続けた。
「ヘルミはその人を守って戦った。その人はすごく優しくてとても戦いには向いてない人だったから。彼女はその人を守りたかった。でも…」
「……」
「でも、それは全て、その人の狙いだったのね……優しくて思いやりがあってってすれば自分を守ってくれる人が現れるっていう狙いだったの。そしてヘルミは完全にそれに乗せられてしまった。その人を守って戦い抜いて二人だけになったヘルミはホッとして、その人に抱かれて眠ってしまった。だけど、彼女はそのまま永遠の眠りにつかされて、それでここに来たのよ。しかも、そのことを彼女も知ってる。命が尽きる直前、一瞬だけ意識が戻って全てを察してしまったから……」
「そんな……」
それを聞かされたユウカの目に、涙が光っていたのだった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる