上 下
39 / 205
転生編

他愛ないおしゃべりも楽しめます

しおりを挟む
アパートに戻ってきた三人は、ユウカの部屋に集まった。そして、年頃の女の子がよくするような他愛のないおしゃべりを楽しんだ。

「どんな服が好きなの?」

「寝癖がなかなか直らない時はどうしてる?」

「寝入りばなにビクってなるの、あれびっくりするよね」

等々。本当に他愛ないものだ。

それはユウカにとって、ほとんど初めてと言ってもいい経験だった。

『こんな風に話したことなかったのに、アーシェスさんやメジェレナさんとだったらスラスラ言葉が出てくる。すごいな……』

話しながらそんな風に思ってたユウカに、アーシェスが尋ねる。

「ところでユウカって、どんなものが好きなの? 地球出身ならやっぱりマンガやアニメとかって好き?」

「あ、はい。好き…です」

「そっか。地球のマンガやアニメって超有名だもんね。ここでも大人気なんだよ。私はあんまり知らないけど、きっとマンガやアニメが好きな人とも友達になれるよ」

「そうなんですか…? 地球の…って言うか日本のアニメ、ここでもやってるんですか?」

「うん。やってるよ。地球でやってるアニメはもちろん、マンガだって手に入るし。

あんまり人気過ぎて、今じゃ地球に正式にエージェントを派遣して、マンガやアニメやゲームも輸入してる」

「へえ…って。え? でも、地球の人はここのこと知らないですよね…?」

「うん。だから、地球じゃある書店に納品してることになってたり、ある配信会社が配信してることになってるそうだよ。で、そうやって納品されたものをコピーして売ったり配信したりしてるの。

もちろん、地球の法律で言ったらいろいろアウトなのかもしれないけど、ここは地球の法律は関係ないし、だいたい、今の地球でここのこと知られたら、大騒ぎになるでしょうね。経済的なことも連携しちゃったら、たぶん、大混乱になるだろうし」

「あ~…確かに…」

「ここの経済規模って、地球数千個分のレベルなんだって」

「す…っ、数千……!?」

「そうだよ。人口だって、地球型の人間に限定したって、現在ざっと百五十兆を軽く超えるし、それ以外の知的生命体まで含めるとさらにその数十倍の人口がいるからね。地球に比べると物価が安くて経済活動も比べ物にならないくらいに緩やかだけど、元の大きさが違うから」

「はえ~……」

そこまで聞いたところで、

『話が大きすぎてついてけないよ~…!』

とまで思ってしまった。まあ、無理もないだろう。でも、それ以上にユウカを驚かせたのが、

「地球人って、クトゥルー神話までエンターテイメントにしちゃってるんだってね? 他の惑星じゃ口にしただけで失神者が出るくらい、恐怖の対象だったりするのに」

という話だった。

「え!? 他の星にもあるんですか!?」

つい前のめりになってしまった彼女に、アーシェスは、

「当然よ。だって邪神であるクォ=ヨ=ムイがここにいるくらいだし。ちゃんとクトゥルー神話に出てくる他の邪神達も住んでるんだよ。他の地域だけど」

「…そ、そうなんですか…!」

だけど次の瞬間、クォ=ヨ=ムイの姿が頭をよぎったユウカが思ったのは、

『ニャル様があんな感じだったらどうしよう…』

ということなのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...