第一〇七六四八八星辰荘へようこそ ~あるJC2の異種間交流~(セリフマシマシバージョン)

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
6 / 205
転生編

メジェレナ・クヒナ・ボルクバレリヒン、独身、ショップ店員

しおりを挟む
「あ~、アーシェスか……なんか物音するなと思ったらやっぱり新しい子?」

ドアを開けて顔を出したのは、褐色の肌でピンクの髪を逆立てた、少々目つきのきつい女性だった。しかもその瞳は、爬虫類を思わせる縦長の瞳孔を持つ金色と、見るからにイケイケと言うかオラオラと言うか、他者を威圧して自分の存在をアピールしようという感じに見えた。

『あ……怖い人だ……!』

ついそんなことを思ってしまう。石脇佑香いしわきゆうかが最も苦手とするタイプだ。

だから、小さなアーシェスの後ろでは隠れることもできないが、彼女は少しでも目の前の怖そうな人の視線から逃れようと身を縮めるしかできなかったのだった。

そんな石脇佑香に対してアーシェスはにこやかに言った。

「彼女はメジェレナ・クヒナ・ボルクバレリヒン。あなたから見たら怖そうに見えるかもしれないけど、これ、彼女のすっぴんだから。二千年ほど引きこもりしててようやく十年程前からショップ店員として働きだしたの」

『…え…?』

一瞬、意味が分からなかった。

『この怖そうな人が引きこもり…? しかも二千年って…』

呆気に取られる彼女の前で、メジェレナと呼ばれた女性が相貌を崩す。

「もう、止めてよ、アーシェス。あんただって一万年以上ウジウジしてたって聞いてるよ。人のこと言えないでしょ」

困ったような顔をして頭を掻くその様子からは、確かに自分を威圧しようとするような気配は伝わってこない。しかもよく見れば、自分と視線を合わせようとしてない。こちらの目を見てるんじゃなくて、口の辺りを見てるのが分かる。

『あれ…? この人もしかして私と同じ……相手の目を見るのが怖い…?』

石脇佑香が感じたことはまさにその通りだった。メジェレナは本当は臆病な性格で人見知りだった。彼女の外見はあくまで彼女の種族の一般的な特徴でしかなく、肌の色が黒いとか白いとかそういうレベルの話なのだ。

冷静に相手を観察すれば、外見から受ける第一印象とは違うものが見えてくることもある。石脇佑香はこれまでそういうことを教わってこなかった。だから勝手に、他人は自分より強くて乱暴で横柄で怖いと思い込んでいたのである。

相手も人間だ。能力にそれほど極端な差はない。そしてそれなりに弱い部分も持ち悩みもある。人間とはそういうものだ。無闇に自分を卑下する必要などないのだ。

今回の件だけで石脇佑香がそれを理解することはないだろう。だが、それに気付くきっかけにはなったとは思われた。

「初めまして。よろしくね、え、と…?」

メジェレナが口ごもってようやく気付いた。

『あ…そうだ、名前……!』

と、まだ名乗ってすらなかったことに。

「石脇佑香です。よろしくお願いします」

自ら名乗れたこの時点から、彼女のここでの生活が始まったと言っていいのかも知れなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...