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牢獄の女怪

お前の仕事だ

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投獄され放置されてからおそらく二週間。ようやく傷口が塞がってきたらしく、痛みがかなりマシになってきた。

なので、食事の量も少しずつではあったものの増えていた。一つ目のパンはすでに食べつくし、二つ目のパンももう残り少ない。

しかし、例のルーチン作業もこなしつつ、ミカは泣き言一つこぼさず日々を過ごす。

牢の壁に背中を預けて座る彼女の見た目にはさすがにやつれたようにも見えるものの、その目は強い光を失ってはいない。

大の男でも半日も耐えられそうにない環境で、彼女の精神はなおも壮健だった。

するとそこへ、

「よう。生きてるか?」

看守長の声だった。

ミカが僅かに視線を向けると、蝋燭の明かりしかないそこでもすっかり目が慣れてしまって、看守長の表情まではっきり分かった。しかも、もう一人いる。

若い女性だった。ウルフェンスの姪だ。名前は確か、ノーティア。

すると看守長は、牢の扉の鍵を開け鎖を外しながら、

「おい、さっさとしろ。お前の仕事だ」

とノーティアに顎で指示した。

「……はい……」

言われてノーティアは消え入りそうな声で返事をしつつ、牢の扉をくぐって中に入り、ミカのことはわざと見ないようにしているのが分かる様子で奥へと進んだ。

しかし、そこで明らかに動きが鈍る。そんな彼女の前には、排泄用の桶。二週間分のそれが溜まり、溢れかけていた、いや、実際に液体についてはすでに溢れてしまっていた様子に怯んでいるのが分かった。それの交換がノーティアの役目だった。

が、

「ぐずぐずすんな!! 暇じゃねえんだ!! さっさとしろ! この奸族が!!」

看守長に叱責され、ノーティアはビクッと体を竦ませ、持って来た空の桶を置いてから、本当に嫌々という感じで中身がたっぷり入った桶の持ち手を掴み、それを牢の外へと運び出した。ミカ自身はすでに鼻が慣れてしまったことであまり感じなくなっていたものの、桶が揺れるたびに液体がこぼれ、臭いが立ち上る。

そこに、人間としての尊厳などはまるでなかった。家畜以下と言えるだろう。

しかしミカは、その様子についても何も言わず、ただ牢の壁に背を預けて視線だけを向けていた。

自分の排泄物用の桶の交換をしてくれたノーティアに対する労いの言葉の一つもない。

もっとも、そんな風に労われたところで、逆に神経を逆撫ですることにしかならなかっただろうが。

『自分達がこのような扱いを受けているのもこの女の所為だ……!』

と、ノーティアは考えていたのだから。

看守長が見ている前でなければ、桶の中身をミカに対してぶちまけていたかもしれない。

それくらい恨んでいただろう。

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