72 / 112
牢獄の女怪
お前の仕事だ
しおりを挟む
投獄され放置されてからおそらく二週間。ようやく傷口が塞がってきたらしく、痛みがかなりマシになってきた。
なので、食事の量も少しずつではあったものの増えていた。一つ目のパンはすでに食べつくし、二つ目のパンももう残り少ない。
しかし、例のルーチン作業もこなしつつ、ミカは泣き言一つこぼさず日々を過ごす。
牢の壁に背中を預けて座る彼女の見た目にはさすがにやつれたようにも見えるものの、その目は強い光を失ってはいない。
大の男でも半日も耐えられそうにない環境で、彼女の精神はなおも壮健だった。
するとそこへ、
「よう。生きてるか?」
看守長の声だった。
ミカが僅かに視線を向けると、蝋燭の明かりしかないそこでもすっかり目が慣れてしまって、看守長の表情まではっきり分かった。しかも、もう一人いる。
若い女性だった。ウルフェンスの姪だ。名前は確か、ノーティア。
すると看守長は、牢の扉の鍵を開け鎖を外しながら、
「おい、さっさとしろ。お前の仕事だ」
とノーティアに顎で指示した。
「……はい……」
言われてノーティアは消え入りそうな声で返事をしつつ、牢の扉をくぐって中に入り、ミカのことはわざと見ないようにしているのが分かる様子で奥へと進んだ。
しかし、そこで明らかに動きが鈍る。そんな彼女の前には、排泄用の桶。二週間分のそれが溜まり、溢れかけていた、いや、実際に液体についてはすでに溢れてしまっていた様子に怯んでいるのが分かった。それの交換がノーティアの役目だった。
が、
「ぐずぐずすんな!! 暇じゃねえんだ!! さっさとしろ! この奸族が!!」
看守長に叱責され、ノーティアはビクッと体を竦ませ、持って来た空の桶を置いてから、本当に嫌々という感じで中身がたっぷり入った桶の持ち手を掴み、それを牢の外へと運び出した。ミカ自身はすでに鼻が慣れてしまったことであまり感じなくなっていたものの、桶が揺れるたびに液体がこぼれ、臭いが立ち上る。
そこに、人間としての尊厳などはまるでなかった。家畜以下と言えるだろう。
しかしミカは、その様子についても何も言わず、ただ牢の壁に背を預けて視線だけを向けていた。
自分の排泄物用の桶の交換をしてくれたノーティアに対する労いの言葉の一つもない。
もっとも、そんな風に労われたところで、逆に神経を逆撫ですることにしかならなかっただろうが。
『自分達がこのような扱いを受けているのもこの女の所為だ……!』
と、ノーティアは考えていたのだから。
看守長が見ている前でなければ、桶の中身をミカに対してぶちまけていたかもしれない。
それくらい恨んでいただろう。
なので、食事の量も少しずつではあったものの増えていた。一つ目のパンはすでに食べつくし、二つ目のパンももう残り少ない。
しかし、例のルーチン作業もこなしつつ、ミカは泣き言一つこぼさず日々を過ごす。
牢の壁に背中を預けて座る彼女の見た目にはさすがにやつれたようにも見えるものの、その目は強い光を失ってはいない。
大の男でも半日も耐えられそうにない環境で、彼女の精神はなおも壮健だった。
するとそこへ、
「よう。生きてるか?」
看守長の声だった。
ミカが僅かに視線を向けると、蝋燭の明かりしかないそこでもすっかり目が慣れてしまって、看守長の表情まではっきり分かった。しかも、もう一人いる。
若い女性だった。ウルフェンスの姪だ。名前は確か、ノーティア。
すると看守長は、牢の扉の鍵を開け鎖を外しながら、
「おい、さっさとしろ。お前の仕事だ」
とノーティアに顎で指示した。
「……はい……」
言われてノーティアは消え入りそうな声で返事をしつつ、牢の扉をくぐって中に入り、ミカのことはわざと見ないようにしているのが分かる様子で奥へと進んだ。
しかし、そこで明らかに動きが鈍る。そんな彼女の前には、排泄用の桶。二週間分のそれが溜まり、溢れかけていた、いや、実際に液体についてはすでに溢れてしまっていた様子に怯んでいるのが分かった。それの交換がノーティアの役目だった。
が、
「ぐずぐずすんな!! 暇じゃねえんだ!! さっさとしろ! この奸族が!!」
看守長に叱責され、ノーティアはビクッと体を竦ませ、持って来た空の桶を置いてから、本当に嫌々という感じで中身がたっぷり入った桶の持ち手を掴み、それを牢の外へと運び出した。ミカ自身はすでに鼻が慣れてしまったことであまり感じなくなっていたものの、桶が揺れるたびに液体がこぼれ、臭いが立ち上る。
そこに、人間としての尊厳などはまるでなかった。家畜以下と言えるだろう。
しかしミカは、その様子についても何も言わず、ただ牢の壁に背を預けて視線だけを向けていた。
自分の排泄物用の桶の交換をしてくれたノーティアに対する労いの言葉の一つもない。
もっとも、そんな風に労われたところで、逆に神経を逆撫ですることにしかならなかっただろうが。
『自分達がこのような扱いを受けているのもこの女の所為だ……!』
と、ノーティアは考えていたのだから。
看守長が見ている前でなければ、桶の中身をミカに対してぶちまけていたかもしれない。
それくらい恨んでいただろう。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
オークションで競り落とされた巨乳エルフは少年の玩具となる。【完結】
ちゃむにい
恋愛
リリアナは奴隷商人に高く売られて、闇オークションで競りにかけられることになった。まるで踊り子のような露出の高い下着を身に着けたリリアナは手錠をされ、首輪をした。
※ムーンライトノベルにも掲載しています。
奴隷王妃ピュリア ~少年王との愛の記録~
糺ノ杜 胡瓜堂
ファンタジー
様々な種族が混在して暮らしている、我々の住んでいる時間軸、空間軸とは異なるどこかの世界。
リュケメニス族の国「リュケメネア」を舞台にしたファンタジーどすけべ小説です。
長命な種族として知られ、人間のおおよそ10倍、200歳で成人となるリュケメニス族。
人間で言うと35歳に相当する王妃ピュリア、350歳と、若干130歳(汗)の少年王パティアス。
親子のように年の離れた王と王妃が、例によって(笑)イヂワルな侍女長クロミスによってあんなコトやこんなコトになります・・・・。
リュケメニス族の女性には、人間の男性のペ〇スのような器官「牝茎」(ひんけい)があり、勃〇すると10センチ程度になる「牝茎」から、前立腺によく似た器官「性液腺」で造られる「無精液」を男性の射〇のように「射液」します。
「無精液」をすぐに「射液」してしまったり、その回数が頻繁な女性は「妊娠しにくい」という俗説があり、「早漏」王妃ピュリアは、イヂワルな侍女長クロミスからツラい仕置きをされるのでした・・・・。
本当は、世界観や設定なんていうものは、本編の中で巧みに表現をして読者に想像してもらうべきものなのですが、ド下手くそな素人故、「世界観」と「登場人物」についてまとめた前書きを置いてみました。
(本編を書く前に自分用にストーリーベースとして作成したものです)
これを読まずにイキナリ本編をお読み頂いても問題は・・・・ないと思います・・・。
余談ながら、このお話には「エルフ」とか「オーク」等は出てきません、人間もおりません。
「長命な種族」という点では、エルフに似ている点もありますが、特に耳は長くはありません。
「なろう」でお馴染みの「中世欧州」風世界ではなく、古代ギリシアをイメージして頂くと有難いです。
(実際、設定に当たっては古代ギリシアの都市国家、アテナイとスパルタを足して二で割ったような感じて作っております)
いつものとおり(!)ラブラブなカップル(今回は少年王と母親のような年齢の王妃)が、他人(女性)によってその営みを管理されるというニッチなジャンルとなっております・・・。
ファンタジーになっても、いつもとやってることは変わりません(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる