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歴史上最も忌むべき悪女

どこを切り捨てるべきか

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『郷に入っては郷に従え』

そういう言葉があるように、ある程度はその地の風習や習慣に合わせる必要はあるのだろう。それが合理的な理由の下に行われているものであればミカも蔑ろにはしない。

けれど、ここの王族や貴族らのしていることはそれとは明らかに違う、ただの虚飾と怠惰と浪費なのだ。それがセヴェルハムト帝国そのものを蝕んでいる。

冷静に客観的に見ればこれは紛れもない事実。

王族や貴族の無駄遣いを支えるために酷使された国土も民も疲弊している。

その一方で、彼女はこうも考える。

『私は別に、民主主義が至高だと唱えるつもりはないのだ。力を持った少数の人間が専断によって迅速に苛烈に政策を執行しなければいけない環境というのは確かにある。

今のこの世界はリソースが限られている。限られたリソースの中でより多くの人間が生き延びるためには、敢えて一部を切り捨てる決断をしなければならない時もある。

民主主義が成立するには、弱者すら切り捨てずに済む十分なリソースと、民主主義のシステムを理解するための教育が必要なのだ。

しかし、今のこの世界にはそのどちらもない。食料の生産力と人口増加のバランスは取れておらず、すべての国民に十分な教育を行うためのインフラも事実上存在しない。そしてどちらも一朝一夕で備えられるものではない。数十年、場合によっては数百年というスパンを見なければいけない。

では、ここ数年内でこの国を立て直すために切り捨てるべきはどこだ…?

王族や貴族がこの国に占める割合は僅かに三パーセントほど。概算でもその三パーセントが国内消費の三十パーセントを占めている。となれば王族や貴族の浪費をやめさせればこの国はかつての威容を取り戻せるか?

いや、国家の運営というのはそんな単純なものではない。王族や貴族がそれとして成立するために必要なコストというのも確かに存在するのだ。王族や貴族が庶民と同じになってしまっては誰が国防を担うというのだ? 兵は庶民の中から募ればいいとしても、それらを指揮し責任を負う立場の人間はどうする? 庶民の中にそういう人材が現れることを期待するのは、それこそ宝くじに当選することを期待するようなものだろう。そんな夢物語では話にならない。

私の見立てでは、質素倹約に努めても削減できるコストは国内消費の僅か六パーセントから七パーセント。それすら希望的観測を含めたものでしかない。

どこかの国の野党も言っていたではないか。『予算配分を見直せば原資はいくらでも湧いてくる』と。だが、実際に政権を取って改革に乗り出してみたはいいがそのような美味い話など現実には存在せず、ただの<ホラ話>だったとして国民からの信頼を失い、すぐさま政権を奪い返されたということが。

それと同じ失敗をするわけにはいかん。

とにかく現時点ではリソースが限られているのは厳然たる事実。

私はリオポルドと共にこの国を巡り、この国を立て直すためにどこを切り捨てるべきかを見極める』

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