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歴史上最も忌むべき悪女
ご無体な……!
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地方担当の大臣であるボリントン卿と入れ替わりで現れた農業担当の大臣であるスーリントン卿も、ボリントン卿と同じく緊張感のない様子でミカの前に立った。
そして、
「今年もここまで例年と変わらずにまずまずの収穫でした。これもひとえにリオポルド陛下と妃殿下の御威光の賜物ですな」
などと実に内容のないただの『おべんちゃら』を述べただけであった。
するとミカは、
「それはおかしいな。先ほど、ボリントンは、『作物が不出来なため税を減免してほしい』という、地方からの陳情を持ってきたのだが、貴公の話が本当であれば、先程の陳情は虚偽ということになるが?」
と冷たく告げた。
瞬間、スーリントン卿の顔からサーッと血の気が引く。
「そ…それは不可思議なこともあるものですな。いや、私が受けた報告の限りではそのような話は……」
などと落ち着きのない様子で応える。だからミカは、
「では、作物ごとの正確な収穫量を報告せよ。今年のネプルは大樽にどれだけ収穫できた? それによってネプル酒の生産量も決めねばならん。私が直接告げるから、ここで報告せよ」
と改めて問い掛けた。
しかし、いい歳をした白髪交じりの紳士であるはずのスーリントンは酷く目を泳がせながら、ダラダラと汗をたらしつつ、
「え…と、それについては、何も妃殿下のお手を煩わせずとも私めの方で話をさせていただきますゆえ……」
などと歯切れの悪いことをモゴモゴと口走っただけだった。
まったくもって話にならない。
「……」
ミカも呆れて言葉がなかった。それでもなんとか、
「もうよい。つまり貴公は何も知らずに何も調べずにここに来たということに相違ないな?」
と絞り出すように口にし、さらに、
「分かった。貴公はもう今年限りで隠居せよ。ついては近日中に新しい大臣を据えるゆえ、その者への引継ぎが終わり次第、領地に帰ってよい。そして二度とここには足を踏み入れるな。
これはリオポルド陛下の命と心得よ」
ときっぱりと断じた。
「そ、そんな……ご無体な……!」
スーリントン卿は一気に十歳くらい老け込んだような顔でオロオロと狼狽え、<か弱い老人>の姿を見せた。
これがこの人物の<いつもの手>だった。こうして相手の同情を誘い、温情を引き出そうという。
しかしそれはミカには通じなかった。むしろそのあざとい遣り口が彼女の怒りをさらに駆り立てる。
「リオポルド陛下の命が聞けぬと言うのか? ならばそのような不忠者には然るべき罰を与えねばならんな。追って沙汰を出す。貴公は即刻、駐在所へと戻り謹慎せよ」
と吐き捨てた。その上で、
「衛兵! この者を駐在所まで送り返せ! そして監視せよ!」
と命じる。すると警備のために待機していた衛兵が二人、やや戸惑った様子も見せながらも槍を構えてスーリントン卿の前に立ったのだった。
そして、
「今年もここまで例年と変わらずにまずまずの収穫でした。これもひとえにリオポルド陛下と妃殿下の御威光の賜物ですな」
などと実に内容のないただの『おべんちゃら』を述べただけであった。
するとミカは、
「それはおかしいな。先ほど、ボリントンは、『作物が不出来なため税を減免してほしい』という、地方からの陳情を持ってきたのだが、貴公の話が本当であれば、先程の陳情は虚偽ということになるが?」
と冷たく告げた。
瞬間、スーリントン卿の顔からサーッと血の気が引く。
「そ…それは不可思議なこともあるものですな。いや、私が受けた報告の限りではそのような話は……」
などと落ち着きのない様子で応える。だからミカは、
「では、作物ごとの正確な収穫量を報告せよ。今年のネプルは大樽にどれだけ収穫できた? それによってネプル酒の生産量も決めねばならん。私が直接告げるから、ここで報告せよ」
と改めて問い掛けた。
しかし、いい歳をした白髪交じりの紳士であるはずのスーリントンは酷く目を泳がせながら、ダラダラと汗をたらしつつ、
「え…と、それについては、何も妃殿下のお手を煩わせずとも私めの方で話をさせていただきますゆえ……」
などと歯切れの悪いことをモゴモゴと口走っただけだった。
まったくもって話にならない。
「……」
ミカも呆れて言葉がなかった。それでもなんとか、
「もうよい。つまり貴公は何も知らずに何も調べずにここに来たということに相違ないな?」
と絞り出すように口にし、さらに、
「分かった。貴公はもう今年限りで隠居せよ。ついては近日中に新しい大臣を据えるゆえ、その者への引継ぎが終わり次第、領地に帰ってよい。そして二度とここには足を踏み入れるな。
これはリオポルド陛下の命と心得よ」
ときっぱりと断じた。
「そ、そんな……ご無体な……!」
スーリントン卿は一気に十歳くらい老け込んだような顔でオロオロと狼狽え、<か弱い老人>の姿を見せた。
これがこの人物の<いつもの手>だった。こうして相手の同情を誘い、温情を引き出そうという。
しかしそれはミカには通じなかった。むしろそのあざとい遣り口が彼女の怒りをさらに駆り立てる。
「リオポルド陛下の命が聞けぬと言うのか? ならばそのような不忠者には然るべき罰を与えねばならんな。追って沙汰を出す。貴公は即刻、駐在所へと戻り謹慎せよ」
と吐き捨てた。その上で、
「衛兵! この者を駐在所まで送り返せ! そして監視せよ!」
と命じる。すると警備のために待機していた衛兵が二人、やや戸惑った様子も見せながらも槍を構えてスーリントン卿の前に立ったのだった。
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