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第四世代

メイフェア編 死因の可能性

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『多臓器不全が竜生りゅうきの死因の可能性がある』

と言っても、それを明確に裏付ける根拠は今のところない。あくまでも<推測>の域を出ないものでしかない。ないが、竜生りゅうきがこうして現に死亡している以上は、有力な説の一つではあるよな。

と同時に、

『じゃあなぜ多臓器不全に陥ったのか?』

という点も重要になってくるだろう。レックスも、

「おそらくはそもそも生物として無理のある成り立ちをしていたから生命活動を続けられなかったのだと私も思うものの、なにしろ比較検証できる対象が存在しないから、それを確かめようもないのが正直なところだね」

防疫服の面体の中で苦笑いを浮かべながらそう口にした。これはつまり、

『何らかの疫病に感染したことで死に至った可能性も否定はできない』

という意味でもある。だからこそ防疫服を身に着け隔離室で解剖を行ってるわけだが、細菌やウイルスについてももちろん解析していて、

「でも、少なくとも解析機に掛けた検体からはすでに確認されているものしか検出されてないね」

シオがデータを確認しながら告げてくれた。その上で、

「一応、乳酸菌の一種であるアシドフィルス菌の近似種がかなり多く見受けられるけど、果たしてそれが死亡の原因たりえる感染症を引き起こしたのかどうかについては何とも言えないかな。私達人間とっては何の問題もないレベルだし」

とも。

そうだ。<生物として無理のある成り立ち>というのは、何も構造についてだけとは限らない。そこに存在するありふれた細菌やウイルスへの耐性を持たなければ、俺達人間にとっては無害どころか有益ですらあるものであっても致死性を発揮する場合だってあるのが、<生物の世界>だよな。

「だが、念のために検査を行ってみよう。まだ完全には死滅してない竜生りゅうきの細胞を使って」

言いつつレックスが採取した検体を鈴夏すずかが受け取って、解析機(分析機)に掛ける。これは、細菌やウイルスが生き物の細胞にどういう影響を与えるかを見ることもできるんだ。

そしてその結果が出るまでの間にも、解剖は進む。鱗を形成する外皮を体の内側から切り取ることで、同時に切開部分を広げていく。胸部、頸部へと。

その手際は、久利生くりうによる外科手術を見ているかのように手慣れたものだった。

まあこれはあくまで<解剖>であって<命を救うための手術>じゃないが。

それでも、レックスの手さばきは<生命への敬意>さえ感じさせる丁寧なものだったように思うし、実際に彼は竜生りゅうきを敬っているんだろうな。

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