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第四世代

閑話休題 墓標

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今、錬是れんぜらが暮らしている集落には、いくつもの墓標が建てられている。

それは実際に遺体が埋まっているものもあれば、遺体はそこになく単なるモニュメントとして建てられたものもある。

だがいずれも、彼らが関わった命に対する<悼む気持ち>を具体的に意識するのに役立っていた。それこそが<墓標>というものの存在意義なのだろう。

野生の生き物は基本的にそんなものは必要としていない。

<亡くなった者を悼むという感覚>

がそもそもないからだ。それがないからその感覚を向けるための目印も必要としていない。

これは、<薄情>とかそういう問題ではない。そんな感傷にかかずらっている余裕などないからだ。そんなことを気にしていては自身の命すら守れない。それくらいの状況だからだ。

人間が亡くなった者を想い悼むのは、

『それだけの余裕があるから』

というのも紛れもない事実だろう。

となればそれだけの余裕がない者に対してそういうものを要求するのは、無理難題以外の何ものでもないのかもしれない。

だからこそ錬是れんぜ達は、<亡くなった者を悼むという感覚>を誰かに対して強要することはない。それが筋違いだというのをよく理解しているからだ。

にも拘らず、錬是れんぜはもとよりその集落に暮らす者達のほとんどが、軽くではあっても墓標に対して挨拶するのも欠かさない。錬是れんぜがあまりにも当たり前にしていることで、なんとなく習慣づいてしまったからだ。加えて強要されないから反発する必要もないのだろう。そもそも錬是れんぜ自身が家族や仲間から反発されるような振る舞いを普段からしていないというのもある。

無論、だからといって誰もが彼のすべてを肯定しているわけではない。

『ちょっと合わないな』

と感じている部分も間違いなくある。だからこそ<別の集落>という形である程度の距離を置いて暮らしている者もいるのだ。そうでなければ一箇所に集まって暮らした方が無駄が減り効率的な運用ができるだろう。しかし、<効率的な運用>こそがすべてに勝る正義というわけでもない。

<人間という生き物>はそこまで合理性だけで成立する生き物ではない。時には不合理な対応も必要になる。決められた規格で創られたロボットではないからだ。<心>を持つからだ。

<墓標>というものも、それを端的に表しているだろう。合理性だけを考えれば<無用の長物>以外の何ものでもないそれを必要としているのは、人間に心があるからだ。合理性だけでは割り切れないからだ。

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