2,441 / 2,554
第四世代
焔と彩編 彼の子供達
しおりを挟む
救急搬送では間に合わないと判断し、エレクシアはその場で<手術>を始めた。もっともこれも、ロボットである彼女が自ら判断して行ったことじゃない。あくまで俺が、
『駄目だ、間に合わない』
と感じたのを察知してそれに則した対応をしてくれただけだ。俺を主人とし俺に最適化された彼女は、はっきりと言葉にしなくても俺の意図を酌んでくれることもある。今のロボットはそこまでのことができるんだ。
もっとも、かつての俺はそれについて、
『ロボットに心まで読まれてる』
と感じて嫌悪してたりもしたけどな。だが今はすごく頼もしい。
とはいえ、彼女が持っていたのは、簡便な処置を行うための救急キットのみ。それでできる最大限のことをエレクシアは躊躇なく行おうとしてくれた。
切断された頸動脈を縫い合わせ、<医療用接着剤>で補強。それを僅か一分少々で行ってみせる。
さらにはすかさず自らに備えられた除細動器を用いた後に心臓マッサージ。加えて<心臓ペースメーカー>の役目も果たす。つまり今の彼女は、
<生命維持装置>
そのものになったんだ。
そうしているうちにハチ子が到着。エレクシアは新を抱いて乗り込み、ジャンプテイクオフで垂直離陸。全速力で俺達の集落を目指した。<治療カプセル>に収容するためだ。
治療カプセルでなら、どんな傷も治せる。死んでさえいなければ……
ところでこの時、レトとルナがどうしていたかと言うと、実はアカトキツユ村に逃げ帰っていたんだ。それこそ、
『命からがら』
でな。
地球人の感覚だと、
『新を見捨てて自分達だけ逃げた』
『酷い話だ』
的な解釈になるだろうが、違う、そうじゃない。野生ではこれが正しいんだ。これでいいんだ。もしここで新を助けようとしてマンティアンに立ち向かおうとすれば、レトとルナまで犠牲になっていただろう。それじゃ意味がない。なんのために新が庇ったのか、分からなくなってしまう。
野生においては自らに連なる次の世代を生かすために犠牲になるのはむしろ<摂理>というものだ。レトとルナは新の実子ではないものの、<彼の子供達>なんだよ。それを生かすための振る舞いは、何も不自然なものじゃない。
それでも地球人である俺にとってはそれだけで完全に割り切れるものじゃない。こんな形で我が子を失いたくはない。だからこそできる限りのことをする。してもらう。
エレクシアは、そんな俺の要望に応えるために最善を尽くそうとしてくれた。そのために存在するロボットであるからこそ。
『駄目だ、間に合わない』
と感じたのを察知してそれに則した対応をしてくれただけだ。俺を主人とし俺に最適化された彼女は、はっきりと言葉にしなくても俺の意図を酌んでくれることもある。今のロボットはそこまでのことができるんだ。
もっとも、かつての俺はそれについて、
『ロボットに心まで読まれてる』
と感じて嫌悪してたりもしたけどな。だが今はすごく頼もしい。
とはいえ、彼女が持っていたのは、簡便な処置を行うための救急キットのみ。それでできる最大限のことをエレクシアは躊躇なく行おうとしてくれた。
切断された頸動脈を縫い合わせ、<医療用接着剤>で補強。それを僅か一分少々で行ってみせる。
さらにはすかさず自らに備えられた除細動器を用いた後に心臓マッサージ。加えて<心臓ペースメーカー>の役目も果たす。つまり今の彼女は、
<生命維持装置>
そのものになったんだ。
そうしているうちにハチ子が到着。エレクシアは新を抱いて乗り込み、ジャンプテイクオフで垂直離陸。全速力で俺達の集落を目指した。<治療カプセル>に収容するためだ。
治療カプセルでなら、どんな傷も治せる。死んでさえいなければ……
ところでこの時、レトとルナがどうしていたかと言うと、実はアカトキツユ村に逃げ帰っていたんだ。それこそ、
『命からがら』
でな。
地球人の感覚だと、
『新を見捨てて自分達だけ逃げた』
『酷い話だ』
的な解釈になるだろうが、違う、そうじゃない。野生ではこれが正しいんだ。これでいいんだ。もしここで新を助けようとしてマンティアンに立ち向かおうとすれば、レトとルナまで犠牲になっていただろう。それじゃ意味がない。なんのために新が庇ったのか、分からなくなってしまう。
野生においては自らに連なる次の世代を生かすために犠牲になるのはむしろ<摂理>というものだ。レトとルナは新の実子ではないものの、<彼の子供達>なんだよ。それを生かすための振る舞いは、何も不自然なものじゃない。
それでも地球人である俺にとってはそれだけで完全に割り切れるものじゃない。こんな形で我が子を失いたくはない。だからこそできる限りのことをする。してもらう。
エレクシアは、そんな俺の要望に応えるために最善を尽くそうとしてくれた。そのために存在するロボットであるからこそ。
0
お気に入りに追加
174
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。
ねんごろ
恋愛
主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。
その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……
毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。
※他サイトで連載していた作品です
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる