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第四世代

焔と彩編 まさしく晩節を

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いずれにせよ、すっかり<高齢者>という印象にはなりつつも、ほむらさいは、二人揃って穏やかに生きていた。

俺達の集落で暮らしながら、しかし二人は実質的には<野生の獣>のようなものだっただろう。『たまたまそこに棲み着いただけ』の。

俺達の方も過剰に干渉することは避けてたし。

俺は二人の親だからこそ二人に任せてたんだ。

それでも、パパニアンのほむらはともかく、本来はレオンであるはずのさいも、<レオンらしい獰猛さ>は、りんよりもずっと薄れてしまっていたように感じる。

<狩り>についても、獲物にしてるのは鳥やチップ竜チップといった小動物ばかりで、パパニアンはおろか猪竜シシボクサー竜ボクサーを狙うこともほとんどなくなっていたよ。

後はほむらと同じく木の実や果実が中心の食事だったな。

そんな暮らしぶりが気性に影響を与えていた可能性もあるのか。一応、木の実や果実についてもちゃんと消化し栄養として吸収することはできるというのは分かってる。普通のレオンはそこまでしないだけで。

だからか、元々はさいの方がやや気性が激しい印象だったにも拘らず、りんがレオンとしての生き方を選んでからはすっかり逆転していた気がするというのはあった。

りんの方がよっぽど怖い感じになってたんだ。

で、今ではさいはそれこそ、

<穏やかなおばあちゃん>

って感じだよ。自身の衰えを、りんほどは隠そうとしてない気もする。

ただ、考えてみればりんが狩りにさえ興味を示さず孫達にじゃれつかれるままになっていたのは<衰え>からくるものだったんだろうなとは思うよ。

俺達の目には単に、

『だらだらごろごろしてる』

ようにしか見えなかったけどな。

思い返すとしんも晩年はそれまで以上にぐうたらしてたし、そうも亡くなる少し前には気力そのものが落ちている印象は確かにあった。肉体がもう限界を迎えていたからそうしかできなかったんだろう。

そんな風に考えた上でかいゆうの姿を見てみると、まさしく<晩節>を過ごしているんだろうなというのが分かってしまう。

そうのパートナーであるけいは、毅然とした態度で今も群れをまとめようとしている。無論、『ボスとして』というわけじゃないが、元々雌や子供達をまとめるのは彼女の役目だったしな。

対して、かいは明らかに落ち込んだ様子だった。もうそれこそこのまま息を引き取ってしまうんじゃないかと思わされるくらいには。

ボスの座を狙う若い雄達からすれば絶好のチャンスだろう。だが、そうかいの群れではそれは起こりそうにない。

小集団の各リーダー達が<実質的なボス>の役目も果たしてるしな。

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