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第四世代

焔と彩編 今の時点での最善

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そうりんが立て続けに亡くなり、<ふくの子>はいよいよかいさいを残すだけとなった。

じんの子は、めいじょうももういない。

ようの子はあかりすいか。

対してひそかの子は、ほまれひかりほむらあらたも健在だ。

どうしても捕食者プレデターの方が寿命が短い、と言うか、

『衰えをひた隠しにしようとすることで体に余計な負担が掛かる』

のか、はたまた衰えて獲物を獲れなくなれば死ぬしかないがゆえにそういう仕組みになってしまっているのか、とにかく呆気ないくらいの感じで命の幕が下ろされる傾向にある気がするな。

しかしだからといって無理に長生きさせれば今度はひそかのように、本来なら罹ることのほとんどないであろう病気を患ったりする可能性が高くなるわけだ。

今の地球人社会ほどの医療技術があればその辺りの無理もある程度は成立させてしまえるんだが、今の俺達には残念ながら不可能なんだよ。

なればこそ、自然な形での終わりを受け入れるのが今の時点での最善のように思うんだ。

ひかりあかりのように地球人の生き方を再現できるのならまた話は別ではありつつ。

ああそうだ。人間は、人間として生き、人間として死んでいくことができる。手足を失おうがおむつを穿こうが、人間は人間だ。人間じゃないものになってしまうわけじゃない。

一方、野生の獣は、野生を失えばそれは<家畜>だよ。もう違う存在だ。

野生の獣が優れていて、家畜が劣ってると言いたいわけじゃない。家畜であろうと命は命だからな。単に命そのものが人間の経済に組み込まれてしまっているのが家畜という存在だというだけで。この場合の<家畜>には、ペットも含まれる。

ペットの命は、金銭に変えることができてしまうしな。それが『良い』か『悪い』かじゃない。『そういうもの』ってだけなんだ。

ただ、久利生くりうとビアンカのかつての仲間で、戦闘で失った体を義体に置き換えていったことで最終的には、

<宇宙戦闘艇そのもの>

になってしまったような例については、一応は人間としての権利は失っていないものの果たして当人が自分を人間だと認識できているかどうかについては、久利生くりうやビアンカにも分からなかったそうだ。

言葉は交わせても、その彼はかつて大切にしていたもののほとんどに対して執着を失ってしまっていたそうだし。

愛していたはずの家族のことさえ、ただ記憶が残っているだけで<情>が残っている印象はなかったと。

ああ、考えてみれば野生の獣を家畜化するのも、それに近いことなのかもしれないのか。

本人が望むのなら応えるのはやぶさかではないものの、俺としてはさすがにな。

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