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第四世代
閑話休題 晃
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晃はクロコディアである。
母親は悠。父親は力。姉は來。つまり当の<叔父>ということだ。
それでいて、<人間>の傍で成長してきたにも拘わらすその影響はあまり大きくなかったらしく、実に、
<クロコディアらしいクロコディア>
として成長したようだった。
それもあり、比較的早々に巣立っただけでなく、人間達と積極的に関わろうともしなかった。完全に野生に適応し、自由に行動し、消息が知れなくなることもしばしばだった。
しかしだからこそ、クロコディアとしては当たり前の生き方をしていたとも言えるだろう。
ゆえに、彼の両親である悠と力を保護した縁もあって彼の行く末を見守ろうと考えていた連是も、
「おこがましいってもんか……」
と考えて、<見守り>を諦めてしまっていた。
<延>と<辿>という息子が二人いることについては確認できているもののそれ以外についてはまったく把握できていないし、それらしい事例が見られても名前を付けることも諦めてしまった。
なにしろ、<孫のような存在>であるとは言っても血は繋がっておらず、実際に養育に関わったわけでもないことで、連是と血縁関係にある者達に比べればどうしても執着心も限定的になってしまうのは正直なところだろう。
そんな晃も、クロコディアとしてはもう十分に長く生きた。彼の姉である來はやや早逝ではあったものの決して極端に短いというわけでもなく、当の來自身も己の境遇を嘆いている様子も見せなかったのと同じく、彼もまた、自らの命の幕が下ろされようとしていることを嘆いている様子もなかった。
もっとも、彼自身はまだ<死>そのものを受け入れたわけではない。生きることを諦めてもいない。今の時点でできることは最大限行う。だから、狩りもするし、自分の獲物が奪われそうになれば戦いもする。
今も、捕らえた大型魚を他のクロコディアに奪われそうになったのを、太い尻尾の一撃で退けてみせた。クロコディアの尻尾は、<鞭>というよりはほとんど<鈍器>のような打撃力がある。生身の地球人が全力のそれを受ければ骨は砕かれ、下手をすれば内臓破裂でほぼ即死に近いダメージを覚悟する必要があるだろう。
自らに備わった力で彼はこれまで生き延びてきた。しかしそれでも生き物である限りはいつか終わりがくる。
翌日、彼は水辺に横たわったまま動こうとしなかった。いや、動けなかったのだ。ここまでぎりぎりの状態をなんとか保ってきた肉体が、いよいよ限界を迎えたことで。
こうして誰にも看取られることなく、晃はその生涯を終えた、
しかしこれが野生においてはむしろ普通なのだ。
彼自身、自らの生き方をなにも悔やんではいない。
母親は悠。父親は力。姉は來。つまり当の<叔父>ということだ。
それでいて、<人間>の傍で成長してきたにも拘わらすその影響はあまり大きくなかったらしく、実に、
<クロコディアらしいクロコディア>
として成長したようだった。
それもあり、比較的早々に巣立っただけでなく、人間達と積極的に関わろうともしなかった。完全に野生に適応し、自由に行動し、消息が知れなくなることもしばしばだった。
しかしだからこそ、クロコディアとしては当たり前の生き方をしていたとも言えるだろう。
ゆえに、彼の両親である悠と力を保護した縁もあって彼の行く末を見守ろうと考えていた連是も、
「おこがましいってもんか……」
と考えて、<見守り>を諦めてしまっていた。
<延>と<辿>という息子が二人いることについては確認できているもののそれ以外についてはまったく把握できていないし、それらしい事例が見られても名前を付けることも諦めてしまった。
なにしろ、<孫のような存在>であるとは言っても血は繋がっておらず、実際に養育に関わったわけでもないことで、連是と血縁関係にある者達に比べればどうしても執着心も限定的になってしまうのは正直なところだろう。
そんな晃も、クロコディアとしてはもう十分に長く生きた。彼の姉である來はやや早逝ではあったものの決して極端に短いというわけでもなく、当の來自身も己の境遇を嘆いている様子も見せなかったのと同じく、彼もまた、自らの命の幕が下ろされようとしていることを嘆いている様子もなかった。
もっとも、彼自身はまだ<死>そのものを受け入れたわけではない。生きることを諦めてもいない。今の時点でできることは最大限行う。だから、狩りもするし、自分の獲物が奪われそうになれば戦いもする。
今も、捕らえた大型魚を他のクロコディアに奪われそうになったのを、太い尻尾の一撃で退けてみせた。クロコディアの尻尾は、<鞭>というよりはほとんど<鈍器>のような打撃力がある。生身の地球人が全力のそれを受ければ骨は砕かれ、下手をすれば内臓破裂でほぼ即死に近いダメージを覚悟する必要があるだろう。
自らに備わった力で彼はこれまで生き延びてきた。しかしそれでも生き物である限りはいつか終わりがくる。
翌日、彼は水辺に横たわったまま動こうとしなかった。いや、動けなかったのだ。ここまでぎりぎりの状態をなんとか保ってきた肉体が、いよいよ限界を迎えたことで。
こうして誰にも看取られることなく、晃はその生涯を終えた、
しかしこれが野生においてはむしろ普通なのだ。
彼自身、自らの生き方をなにも悔やんではいない。
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