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第四世代

凛編 可能な限りの最大限の備え

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で、うららはそうやって『行儀よく座ってる』ことができないのに、

『れんじ、こういうところではおぎょうぎよくするものだよ』

と言われて錬慈れんじが反発しないか?というと、これが別に反発しないんだよな。

うららうらら。自分は自分』

と考えることがもうすでにできてるみたいなんだよ。てか、やっぱり『反発する必要がない』のが一番大きいのか。

別に普段から頭ごなしに強要されたりしてるわけじゃないし。

なにより、それを言った萌花ほのか自身がお行儀よくチャイルドシートに座ってシートベルトも付けてるしな。

言った当人がちゃんとしてるかどうかってのは、与える影響が大きいだろう。

その点、萌花ほのかは立派だよ。立派なお手本になってくれてる。そして萌花ほのかのお手本になってくれたのが、まどかひなただ。<自慢の孫達>だな。

そうして、特に混乱もなく準備が整い、それを確認したアリアンが、

「では、出発いたします。到着予定時刻は四十五分後。短い時間ではありますが、空の旅をお楽しみください」

と告げ、

「ウウォォ~ン」

と唸りを上げながらふわりと機体が浮き上がる。

「うひゃあ!」

「ひょ~っ!」

「ん……!」

「おお……!」

錬慈れんじ萌花ほのかまどかひなたがそれぞれ声を上げる。

『椅子に座っているのに体が浮き上がる』

という感覚に戸惑っているんだろう。まどかひなたは何度か俺の<ブランゲッタ装備のローバー>には乗ったことがあるから、ここまでじゃなくても近い感覚は経験があるはずだ。それでも、だな。

「……!」

じゅんは声までは上げなかったもののやはり緊張した様子を見せ、

「! !?」

うららひなたにしがみついたまま軽くパニックを起こしたかのように周囲をせわしなく見回した。彼女も俺のローバーには乗ったこともあるとはいえここまでの感覚は初めてだったから、怖かったんだろうさ。

これも元々想定されていたことだ。もしここで彼女がもっと強いパニックを起こし事故になりそうな事態が生じれば、控えていたドーベルマンMPMやエレクシアが対処する。そのための備えだ。

ビジネスとして運用されている旅客機であればここまでのコストは掛けられない。無制限にあらゆる事態を想定して備えることはできない。そんなことをしていては<商売>として成立しない。だからある程度のところで区切りをつけるしかない。だとしても、現時点でのアリアンはそうじゃない。だからコストを考慮に入れなくて済む。

可能な限りの最大限の備えをすればいいだけだ。

商売でやってる旅客機でここまでのものを求めるならそれこそ完全貸し切りのチャーター機でも飛ばすしかないよな。

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