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第四世代

凛編 ただの獣では成し得ないこと

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そんなこんなで、<家族>でそうの墓参りへと向かう。

ちなみにうららひなたと離れたがらないから一緒に行くことになったものの、えいれいやメイや水帆みなほについては、まったく感心も示さなかったから留守番だ。

留守の間は、セシリアとイレーネとドーベルマンDK-aらに管理を任せる。水帆みなほについてはもちろんライラとオルトがいつも通りにちゃんとしてくれるしな。

形の上では<両親>のはずの俺とシモーヌが出掛けるというのに、水帆みなほはそれこそ興味も示してくれない。

『近所のおじさんおばさんがどこかに出掛ける』

程度の認識なんだろうさ。

だがそれについても別に構わない。

『親に対して敬意を払え!』

だとか眠たいことを言うつもりもない。水帆みなほを保護したのは俺達の勝手だ。彼女が助けを乞うたわけじゃない。

『彼女のように<先祖返り>を起こした存在を見捨てておけない』

という<自分の感情>に従っただけだ。それについて彼女が恩を感じなきゃならない義務はないんだよ。たとえ、

<そのおかげで命を拾ったという事実>

があったとしてもな。

だってそうだろう? 彼女のように先祖返りを起こして生まれたきた子供は他にもいるんだ。まどかもそうだし、れいもそうだ。けれど、助けられたのはそれだけだ。それだけなんだよ。

たまたま助けられただけでしかない。

しかも、<じゅん>という実例が示すとおり、先祖返りを起こして生まれてきたとしても、

『絶対に生き延びられない』

というわけじゃないんだ。確率は限りなく低くても、<奇跡>に過ぎなくても、ゼロじゃない。俺達の助けがなくても生き延びられる例はある。

その現実を認めればこそ、俺は水帆みなほに恩を売るつもりなんかないんだ。何より、彼女がああして元気に生きてくれていること自体が、

<最高の恩返し>

だしな。

俺の子供達もそうだ。自らの力で立派に生きてくれているという最高の恩返しをしてくれてる。

以前にも触れたように、野生においては、

『子供が親に恩を返す』

『子供が親を養う』

なんてのは、まず見られないことだ。そんなことをしていたら<種の存続>も危うくなる。

だが、人間は、<地球人という種>は、そのリスクがあっても、情を交わした相手を見捨てることができない。そういう<業>を背負った生き物なんだ。

だからこそ、互いに力を合わせることによって、

<ただの獣では成し得ないこと>

を実現し、今の繁栄を築き上げてきた。

そういう意味じゃ、確かに人間(地球人)は、

『他の動物とは違う』

のも事実なんだろうさ。

俺も、それを否定するつもりはない。

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