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第四世代

凛編 野生の掟

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地球人はよく、

『野生には厳しい掟がある』

的なことを口にしてきたが、それはあくまで、

<比喩的表現>

であって、実際に<掟>なるものが存在するわけじゃない。

だってそうだろう? <掟>や<法>や<ルール>というものは、そもそも明文化されていなければ意味がない。それは必ずしも<文字>として書き起こされていることを意味するわけじゃないにせよ、少なくとも言語化されていなければ誰かに守らせるために提示することもできないしな。

だが、野生の動物に人間のそれほどの明確な<言葉>はない。ここ朋群ほうむの<獣人>達には独自の言語のようなものを持つ者も多いが、<掟>の詳細を形にできるほど複雑なものじゃないんだ。ましてや言葉を持たない動物じゃ、<掟>なんてものを作りようがない。

確かにパパニアンの群れには<掟のようなもの>があってそれに反すれば痛い目を見たりする場合もあるものの、実際にそれでほまれは怖い思いもしたものの、その一方で、<縄張りを主張する遠吠え>を上げたほまれひそかが押さえ付けようとしたりもしたにも拘わらず、割と早い段階でひそかの手からまんまと逃げおおせてしまったりもしてたよな。<パパニアンとしての掟>が絶対のものであるなら、『逃げる』なんてことができるはずもないのに。

それに、ほまれは他の群れから追われたなんてこともあったにせよ、これさえ、この時点のほまれに<力>があれば、それこそ先にメイフェアと出逢っていて彼が望めば、メイフェアが他の群れを退けて、誰もほまれを咎めることさえできないだろう。そんなものが本当に<掟>として機能していると言えるか?

あくまでも、

『<その時点でその種が生きていくには必要な条件>みたいなものがなんとなくあって、それに沿った生き方をする方が生存確率が上がる可能性が高い』

というだけでしかないんだよな。

『それに反すれば生存確率が下がる傾向にある』

だけだから、実は守らなくても生きていける個体もいるんだ。

かつて、ほまれがいる群れで<らい>が一瞬だけボスの座に就いたこともあるが、彼の振る舞いははっきり言って<無法>だった。群れの誰からも嫌われていて、結果、三日天下に終わったとはいえ、それすらたまたまらいの場合は失敗しただけでしかない。彼と似たタイプの個体が群れのボスにしっかりと収まっている例もあるんだ。

だからどこまでも<結果論>でしかないんだよ。上手くいけばそれが正解だし、上手くいかなければ間違いだったというだけでしかない。

<ケースバイケース>

なんだ。

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