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第四世代

凛編 あまり見られない振る舞い

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群れを形成する動物だと<仲間>を守ろうとする振る舞いを見せることはあっても、それを含めた<野生の動物>では基本的に、

『子供が親を守ろうとする』

のはあまり見られない振る舞いだという印象がある。

『親が子供を守る』

のは、自身の遺伝子を継いでくれる存在を生き延びさせる必要があるから、多くの昆虫や爬虫類や魚類のように、

『たくさんの子(卵)を産むことでその中のいくつかが生き延びればいい』

的な戦略を取っている種はともかくとして、一度に生まれる子供の数が限られている哺乳類や鳥類などは特に『守り育てる』必要があるんだろう。そうしないと種が維持できないだろうしな。

だから<共食い>の習性さえあるマンティアンですら、<幼体こども>は守り育てるわけで。

しかし、

『子が親を守る』

というのは、実際には不自然な話だよな。もし親が危機に陥ったのを助けられるほどの力を子供が持っているならそれはすでに一人前になっているわけで、親に守られなくても生きていけるだろうし、

『自分を守ってもらうためには親に生きていてもらわなきゃ困る』

的な理由で守る必要もないわけだ。

さっきも言ったようにあくまで<群れの仲間>としてなら<群れを存続させるためのリソースの一つ>として守る意味もあるとしても、それさえ、自分が傷付いたり命を落としたりしては本末転倒だよな。

『年老いた親の面倒を子供が見る』

というのも含めて、それは<人間(地球人)という種>特有の習性かもしれない。

いや、そうなんだろう。

これまでにも何度も触れてきたように、人間(地球人)という生き物は、<群体>のような性質を持っていて、それを構成する個々人すべてが、

<人間(地球人)という種を成り立たせるために必要なリソース>

なんだろうさ。そしてそれを<情>という形で保守しようとする。ゆえに、<子供から恩義を感じてもらえるような親>は、子供から守ってもらえたりもするわけか。

まあ実際には、子供から恨まれて疎まれて、

『さっさと死ねばいいのに』

と思われるような親も少なくないけどな。その上で子供の方も<世間体>ってのを意識するから体裁上、『親を大切にしている』的な振る舞いをしたりもするが。

<親の介護>をすべて伴侶や業者に丸投げして、

『自分は親のことを大切にしている』

ってな顔をする人間とかもいたらしいじゃないか。六十世紀の人間社会じゃそれこそ<老化抑制処置>さえ実現してみせた医療技術と、メイトギアをはじめとしたロボットのおかげで、<親の介護>なんてものとはほぼ無縁になってたけどな。

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