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第四世代

凛編 便利な理屈

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他者の能力のごく一部を捉えて『優れてる』だの『劣ってる』だの考えるのは、地球人の典型的な悪癖だと俺は思う。

そうやって自分の方が優れてると考えて安心しようとする心理が働いているそうだ。

実に浅ましいと言えるだろうな。

だが、そういう浅ましさも含めて<人間という生き物>の現実なんだから、それから目を背けていても駄目なんだろうさ。

清廉潔癖さばかりを求めていても上手くいかないのは、歴史を見ていても分かるし、AIが蓄積してきた数千年分の膨大なデータからも明らかだ。

夢想主義者達のコミュニティがことごとく破綻してきたのも、それが原因だろうしな。

現実ってのは本当に世知辛い。世知辛いが、だからといってそれを嘆いているだけじゃ何も解決はしない。上手くはいかない。そういうのはただの<他責思考>というヤツなわけで。

『お客が求めてることには応えるべきだ』

と考えて好き勝手言うのも、たいていはその通りにはならないしな。たまに店側企業側が、

『これは有益だ』

と判断して取り入れることがあったりしても、あくまでそれは<店側企業側の都合>でしかない。なのに客側は、

『ほら見たことか』

的に勝ち誇ったりする。実はそれ以外の要望についてはスルーされてるというのに。たまたま店側企業側にもメリットがあるものが採用されただけでそれだ。

そういうところに、

<客の言うことに真摯に向き合う姿勢>

を見出してしまったりもしてるのか。

本当に情けない限りだが、これまた<人間の姿>というものだよな。

朋群ほうむ人達にはなるべくそうなってほしくないものの、そうなってしまう可能性そのものは否定できないし無視もできないだろうさ。

<そうあってほしいという希望的観測>

こそが<性善説>というものだろうが、俺はそんなものには頼らないでおこうと改めて思う。

これまでにも何度も言っているように、<善>も<悪>も、人間が勝手にでっち上げただけの虚構の概念でしかないのは、りん達を見ていてもすごく分かる。彼女達には<善>も<悪>もない。そんな概念に頼らなくても自分達の生をまっとうに生きてくれてる。

<獲物>となる動物達にとってはそれこそ<理不尽で恐ろしい敵>だろうが、そんなものはそれこそ人間も同じだ。自分達が食うために他の生き物を一方的に殺戮してるが、それは<悪>とはされないしな。

善悪の概念なんてのはその程度のいい加減なものだ。自分達の利益を守るために大まかな共通認識を持つための<便利な理屈>でしかないんだよ。

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