上 下
2,260 / 2,381
第四世代

閑話休題 ルコアの日常 その10

しおりを挟む
こうして未来みらいと共に一時いっときの休息を取ったルコアは、モニカが用意してくれた昼食も未来みらいと共にした。

ただ、用意された昼食の量も、なかなかのボリュームだ。なにしろルコアだけでなく今度は未来みらいの分も合わせてなのだから、当然と言えば当然か。

実年齢は六歳でありながら見た目には<高校生くらいの少年>な未来みらいも、<クロコディアとしての身体能力>を持ち、それを維持するためには一般的な地球人の高校生を大きく上回る量の食事を摂取するからだ。

まるで<フードファイター>のごとく。

それらを難なくぺろりと平らげたルコアと未来みらいは、

「今日はあの辺りまで終わらせるからね」

「分かった。俺も頑張る」

穏やかに朗らかにそう言葉を交わす。

二人にとってはそれが<普通>だった。



日が傾きだした頃、ルコアが告げた辺りまで手入れを終わらせた二人は、

「そろそろ晩ゴハンにしようか」

「うん!」

連れ立って歩き出す。そして、

「ただいま」

「ただいま~」

帰ってきたのは、彼女の自宅じゃなかった。

「おかえり」

声を揃えて迎えてくれた人影。ルコアと同じ褐色の目を持つ女性と男性。しかも女性の方は、巨大なクモの頭に乗っているかのような姿をしていた。男性の方は、地球人とほとんど変わらない姿をしているが。

ビアンカと久利生くりうだった。さらに、

「おかえり」

「おか~♡」

ビアンカによく似た少年と、ビアンカに似つつも久利生くりうにも確かに似ている少女が。

ケインと黎明れいあだ。共にすっかり大きくなっている。特にケインは、元々母親に瓜二つだったこともあって、ビアンカよりも髪を短く切り揃えている以外は区別がつかないほどに成長していた。

また、黎明れいあの方も、実年齢は五歳になったばかりでありつつ十二~三歳くらいの思春期に差し掛かった年頃の姿に。

もっとも、こちらはまだ、両親と共に暮らす<子供>だが。

とは言え、それは未来みらいも同じ。あくまでルコアが一足先に大人の仲間入りを果たしただけだ。

さりとて、<家族>であることは変わりない。ビアンカとも久利生くりうとも血は繋がってなくても、確かに彼女は二人の<長女>だった。

そして、夕食は家族揃ってとるのがいつものことだった。

そう、<家族>だ。

大人になって<家>は出ていっても、家族じゃなくなったわけじゃない。誰とも血は繋がっていなくても、紛れもなくルコアはこの家の一員なのだ。

その事実が、彼女の心を支えてくれる。サーペンティアンとしてこの世界に顕現しても、自分が確かに<人間>なのだと教えてくれる。

だからこそルコアは人間でいられるのだろう。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

レディース異世界満喫禄

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,216pt お気に入り:1,187

転生したら神だった。どうすんの?

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:184pt お気に入り:4,255

異世界のんびり料理屋経営

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:198pt お気に入り:3,730

S級冒険者の子どもが進む道

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:451

ウィスタリア・モンブランが通りますよぉ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:48

不死の大日本帝國軍人よ、異世界にて一層奮励努力せよ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,222pt お気に入り:38

(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:433pt お気に入り:3,340

処理中です...