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第四世代
閑話休題 ルコアの日常 その8
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こうして<間引き>を行うルコアと並んで、未来も隣の畝の間引きを行っていた。
だが、実年齢でまだ六歳の彼にはこの作業の意味が十分に理解できていないのもあって、しっかりと育ってきている芽まで摘んでしまったりもする。
それを見たルコアが、
「未来、他のと比べて小さい芽だけを摘むんだよ」
丁寧に諭す。すると未来も、
「お、おう。ごめん」
言いながら慌てて抜いた芽をまた畝に刺して戻した。もっとも、一度そうやって抜いてしまった芽を戻したところでまともに育つとは限らないが。
その辺りもやはり幼いがゆえに理解できていないということだ。
しかし、ルコアは<叱責>はしない。幼い彼がその辺りを理解できていなくてもそれは当然のことであり、これはあくまで<実地研修>という意図も込められたものでもあるからだ。実際に経験を積むことで、<発育の良い芽>と<発育の悪い芽>を区別することができるようになっていくのであって、最初から完璧にできるなどとは考えてもいない。
せっかくの作物を無駄にすることになるように感じられるとしても、その<無駄>自体に意味があるのだ。これによって彼に<発育の良し悪しを見分ける目>が備わっていくのなら、決して本当に無駄になるわけじゃないがゆえに。
ルコアもそれを承知している。いるから、叱責はしない。する必要がない。
そもそもこの畑は、あくまで自分達が余裕をもって生きていくために作られたものである。たとえ未来が受け持った部分の作物が全滅したところで大きな支障もない。それは最初から見越して準備されている。その程度の備えもせずにいるほど、ビアンカも久利生も短慮ではない。
<人材を育てていくためのコスト>
というものをきちんとわきまえているからだ。ビアンカも久利生も、元よりそれをわきまえられる人材だった。なにしろ、
<惑星探査チームの一員>
だったのだから。
『地球人が移住可能な惑星を見付け、実際にそれを検証する』
のを期待されて編成されたチームに選出されるほどの人間なのだ。
厳密にはそれは、
<オリジナルのビアンカ・ラッセと久利生遥偉>
のことだが。
とは言え、そんなオリジナルを、体が透明な点を除けば寸分たがわず再現されている今のビアンカと久利生も、同じ素養は備えている。
さらには、ルコアのオリジナルである、
<ルコア・ルバーン・ドルセント>
も、ビアンカや久利生と同じチームの一員である<メイガス・ドルセント>と<ディルア・ルバーン>を精密に再現した<データヒューマン>を両親に持つことにより、元々、そういう素養を備えていた。
だが、実年齢でまだ六歳の彼にはこの作業の意味が十分に理解できていないのもあって、しっかりと育ってきている芽まで摘んでしまったりもする。
それを見たルコアが、
「未来、他のと比べて小さい芽だけを摘むんだよ」
丁寧に諭す。すると未来も、
「お、おう。ごめん」
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その辺りもやはり幼いがゆえに理解できていないということだ。
しかし、ルコアは<叱責>はしない。幼い彼がその辺りを理解できていなくてもそれは当然のことであり、これはあくまで<実地研修>という意図も込められたものでもあるからだ。実際に経験を積むことで、<発育の良い芽>と<発育の悪い芽>を区別することができるようになっていくのであって、最初から完璧にできるなどとは考えてもいない。
せっかくの作物を無駄にすることになるように感じられるとしても、その<無駄>自体に意味があるのだ。これによって彼に<発育の良し悪しを見分ける目>が備わっていくのなら、決して本当に無駄になるわけじゃないがゆえに。
ルコアもそれを承知している。いるから、叱責はしない。する必要がない。
そもそもこの畑は、あくまで自分達が余裕をもって生きていくために作られたものである。たとえ未来が受け持った部分の作物が全滅したところで大きな支障もない。それは最初から見越して準備されている。その程度の備えもせずにいるほど、ビアンカも久利生も短慮ではない。
<人材を育てていくためのコスト>
というものをきちんとわきまえているからだ。ビアンカも久利生も、元よりそれをわきまえられる人材だった。なにしろ、
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厳密にはそれは、
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のことだが。
とは言え、そんなオリジナルを、体が透明な点を除けば寸分たがわず再現されている今のビアンカと久利生も、同じ素養は備えている。
さらには、ルコアのオリジナルである、
<ルコア・ルバーン・ドルセント>
も、ビアンカや久利生と同じチームの一員である<メイガス・ドルセント>と<ディルア・ルバーン>を精密に再現した<データヒューマン>を両親に持つことにより、元々、そういう素養を備えていた。
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