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第四世代

閑話休題 ルコアの日常 その7

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そんなこともありつつ、

<ルコアの顔を少しでも早く見たかった未来みらい

と共に、ルコアは自宅を出た。<仕事>をするためだ。

彼女の<仕事>。それは、

<彼女が住むビクキアテグ村を維持するために作られた畑を管理すること>

だった。

人間が安定して暮らしていくためには、食糧が確実に確保できるのが必須になってくる。これは、地球の歴史からも確認できる厳然たる事実だ。現在の村の規模であれば狩猟と採集だけでも生きていくには十分かもしれないが、かつて、草原に生息する草食動物達の間で疫病が蔓延し、個体数が激減、生態系のバランス自体がほぼ崩壊している状態にまで至ったことがあった。

ビクキアテグ村がある地域までは疫病は蔓延しなかったものの、大きくバランスを欠いた地域があった影響は少なからずあって、狩猟による食料の確保にも不確実性が懸念される事態に至ったのだ。

だからこそ、ビクキアテグ村でも、より確実に食料の確保を実現するために畑を耕していたというのもある。

もっとも、それ自体は、ロボット達に任せてしまうことも可能ではある。それだけの性能を持つロボット達がビクキアテグ村にも常駐していた。しかし、

『人間自身が自らを生存させていくためのノウハウを持つ』

のが重要であると誰もが考えているがゆえに、自分達の手で畑を耕し、野菜を育て、それらのノウハウを受け継いでいくことを是としている。

ルコアも、そこまで難しく考えているわけではなかったものの、ビアンカ達と一緒に畑で汗を流すこと自体は楽しくて好きだった。

楽しいからこそ無理なく続けられた。

<業としての農>

は、決して楽しいだけのものではないとはいえ、そうなるとどうしても、

『ある種の適性を持つ者だけが従事する形になる』

面もあるとはいえ、現状ではまだそこまでの規模ではないからこそ楽しんでいられるというのもあるだろう。

なお、ルコアの場合は、<二足歩行>を行う他の人間と違って、直径で五十センチある体を地面に擦る形になってしまうため、そんな彼女が中に入って作業をしやすいように、<畝>の間隔も通常の畑のそれよりは広くとられている。

これまた<業としての農>であればもっと効率よく耕作するために必要最低限の間隔に抑えるべきところではあるにせよ、今はそこまでじゃないことで、それも可能だった。無駄とも思えるやり方であっても、十分な収穫量が確保されているからだ。

そんな畝の間を進み、ルコアは、せっかく生えた野菜の芽を摘んでいく。

発育の悪い芽を敢えて摘んで間引くことで他の芽の発育を促す作業だった。

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