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第四世代

ホビットMk-Ⅱ編 エピローグ

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新暦〇〇三九年十一月三十日



そうして、ルカニディアの少女とホビットMk-Ⅱの奇妙な関係が始まった。

なので、そのホビットMk-Ⅱについては、

<ルカニディアの少女の観察>

という任務を与えることで、少女の傍に留め置くことになった。

彼女とホビットMk-Ⅱとの関わりが今後どうなっていくかは分からないが、それがどんな結果になろうとも受け止めなきゃいけないと思う。

こんな言い方をするとまた<フラグ>のように思えるかもしれないとしても、実際に何かが起こるか起こらないかは、その時になってみないと分からない。だからこそそれを受け止める覚悟をあらかじめ作っておくわけだ。

ことが起こってから慌てても、なかなか上手くはいかないだろうしな。<備え>だよ。どんなことにも備えは必要だという話だ。

備えというのは、避難場所を用意したり、非常食などを準備するだけのことを言うんじゃないと俺は思う。むしろ<気構え>こそを指しているんじゃないかと。

避難場所を用意したり非常食などを準備しただけで安心してしまって油断しては意味がないんじゃないかな。いざという時に役に立たないんじゃないかな。

逆に、気構えをしっかり作っておけば、他の準備が必ずしも万全でなくても、そこまで慌てなくても済むかもしれない。

例えば、アラニーズという種族一つを取ってみてもその人生において何が起こるかなんて、それこそデータの蓄積も何もないしな。ビアンカとケインとイザベラとキャサリンの四人しかいないんじゃ、すべてはこれからだ。だから<万全の備え>なんてのは、今の時点では望みようもない。

ビアンカが黎明れいあを妊娠した時に、ひどい腰痛を訴えたりしたが、これも、アラニーズならではのものだっただろうし。

なにしろ、<アラニーズとしての本体>ではなく、<地球人の体が精密に再現された部分>での妊娠だったんだ。

そんなもの、どれほど地球人向けの医科学に精通していようとも正確に予測しようもない。『地球人の体が精密に再現されている』と言っても、あれは、

<アラニーズの頭部>

だからな。アラニーズにとっては<体の一部>なんだ。だから、アラニーズの体全体にどういう影響があるのかは、まだまだ未知数なんだよ。

そんなアラニーズほどは<異形>ではないと言えるかもしれないルカニディアであっても、昆虫の外骨格を思わせる皮膚を持つ時点で地球人の常識が通じるはずもない。

そう考えれば、『何が起こるか?』なんて気にしてても無駄だというものだろうさ。

だったらこれからも、ただありのままを受け止めるように努めるだけだ。

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