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第四世代

ホビットMk-Ⅱ編 願ってしまうだけ

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そんな、

<獣のような人間>

であるキャサリンに、ドーベルマンMPM十六号機はつき従ってくれている。ただの<従者>としてではなく、<ある種のパートナー>として。

彼女の力だけで問題ない時には一切手出しせず、ただ見守ってくれる形で。

それがキャサリンと十六号機の在り方ということだ。

そんな様子を見届けた後、カメラを、

<ルカニディアの少女とホビットMk-Ⅱ>

の方に戻す。

が、特にさっきまでと変化もなかった。一般的なフィクションならここで何かが起こってたりするのかもしれないが、そんな都合よくイベントが起こるわけじゃないというのが<現実>ってもんだ。<フラグ>なんていうのも、

<物語の中でイベントを期待させるための前振り>

でしかない。現実においては<フラグを思わせる言動>があったところで実際にイベントが起こるわけじゃない。たまたまそれらしいことが起こった時に、

『やっぱり』

と思ってしまう人間がいるだけだ。典型的な<確証バイアス>ってヤツだろうな。同じような状況で何も起こらなかった時のことは頭に残さず、何かが起こった時だけ強く印象に残してしまってると。

確かに、<何か>が起こればそれは記憶に残りやすいだろう。印象に残りやすいだろう。だからといってそんな印象的な一部分だけを切り取って、

『ほら見ろ』

なんてのは、

『現実を見てる』

とは言わない。

『現実の一部を都合よく切り取ってる』

だけだ。そして現実の一部を都合よく切り取ってちゃ、現実ってのは見えてこない。

俺はそれをわきまえなきゃいけないと思う。意識してそれをわきまえてないとついつい自分に都合のいい解釈をしてしまうのが、

<人間という生き物の習性>

だしな。

そんな俺の見てる先で、なんとも言えない<微妙な距離>を保ちつつ、ルカニディアの少女とホビットMk-Ⅱは、それぞれ好き勝手をしている。もちろんホビットMk-Ⅱの方は本当に好き勝手をしてるわけじゃなく、<調査>を行ってるわけだが、ルカニディアの少女から見ればそれも、

『何かよく分からないけど好き勝手なことをしてる』

ということになるだろうということだ。

そういう光景も、メディアにおけるチャンネルなんかでは、

『いい感じに編集して、チャンネル製作者の意図をそこに込めたりする』

ということがあるにしても、俺はその手のノウハウは持ってないからな。俺が見た通りを俺の言葉で綴ることしかできない。それが他人から見て『面白い』かどうかは、俺の関知するところじゃない。

ただ、

めいの面影を持つルカニディアの少女>

が穏やかに生きていけるのを願ってしまうだけだ。

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