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第四世代

ホビットMk-Ⅱ編 完璧じゃなくても

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キャサリンは、アラニーズだ。その身体能力はヒト蜘蛛アラクネに準じ、気性も、生まれつき激しく苛烈な傾向がある。これは、

<アラニーズとしてのそもそもの気質>

だ。確かにケインは臆病ではあるものの、そう見える彼でさえ、自身の命の危険があるとなれば、『それしか手がない』となれば、容赦なく攻撃を加えることもあるだろうというのは、窺える。

彼にとっては『その必要がない』からそうしないだけだ。

『優しい』んじゃない。『臆病』なだけなんだよ。彼の場合はな。

ただ同時に、ちゃんと<仲間意識>は持ってくれてるから、少なくとも仲間や家族に対しては労りの気持ちも持ってくれてるだけだ。それ自体が彼にとっては、

<必要なこと>

だしな。その上で、

『他者に対して攻撃的になる必要がない』

からこそ、穏当に過ごそうとしてくれてるんだ。そこはキャサリンも変わらない。当然、イザベラも。

野生の猛獣と同じ気性を持っていても、<攻撃する必要>がなければ攻撃なんかしないさ。

かつて本物の動物が展示されていた動物園で、トラやライオンが普段は家ネコのようにのんびりしてるのと同じようにな。

現在の、

<野生の獣を緻密に再現したロボットが展示されている博物館としての動物園>

でも、それが再現されている。あくまで<本物のトラやライオン>のように、

『必要とあらば自分の世話をしてくれている飼育員でさえ襲う』

なんてことがないだけだ。そもそもロボットだからそんなことをする必要もないってだけだ。

キャサリンの場合は、決して彼女に、

『人間に対して攻撃的になる必要性を与えない』

ために十六号機を従わせてるわけじゃないが、結果としてそうなってるのも事実ではある。

『人間では、たとえ<実の親>であってもそこまでするのはなかなか難しい』

という部分までフォローしてくれるしな。どんな親でも所詮は人間である以上、完璧ではいられない。完璧でない以上は失敗もするしついつい甘えたくなることもあるだろう。

さらに、下手に<完璧な親>を目指そうとして精神的に追い詰められれば、最悪の場合、<事件>にだって至る場合もある。というか、地球人社会においてそれが『あった』のは確認されている。これは誤魔化しようのない事実なんだ。

だから俺は、<完璧な親>なんて目指すつもりもなかったし、実際、完璧には程遠い親でしかないだろうさ。

でもな、それでいいんだよ。

『完璧じゃなくても生きていくことはできる』

子供に対してそれを実践してみせるのも、親の役目の一つだしな。

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