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第四世代

ホビットMk-Ⅱ編 人間として

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『軍人としてのスキルを備えたビアンカが武器を手にして戦えば、おそらくばんは敵じゃない』

武器を使うことを地球人はついつい<卑怯>だと捉えてしまうことが多いだろうが、そんなものは地球人ならではの<傲慢さ>でしかないだろう。

『武器を使う』

のは、人間以外の動物でも普通にやってることだ。爪や牙といった武器をな。

人間の場合はそれを<後付け>で<オプション>として用意できるというだけでしかない。そんなオプションを使えること自体が、

<人間の能力>

なんだ。

<人間という種が持つ能力>

なんだよ。だから決して卑怯でもなければ恥じるようなことでもない。<そういうもの>ってだけだ。

実際、ばんの命を終わらせた、

ばんの子であるヒト蜘蛛アラクネ

は、ヒト蜘蛛アラクネとしては非常に珍しく、

<武器を使う個体>

だった。尖らせた木の枝をまるで剣や槍のように使って、<老獪なベテラン>であったばんを倒し、そしてその縄張りを奪ったんだ。<世代交代>としてな。

ヒト蜘蛛アラクネという種は、自然には発生しなかったかもしれないが、すでにここ<朋群ほうむ>では、野生動物の一種として完全に定着している。多少の増減はありつつも、全体としては概ね一定の個体数を維持しているんだ。

だからこうして、健全な形での世代交代は必要になってくる。

ばんの子>は、自身の肉体に元々備わっているものではなくても、<自身の知能によって編み出した武器>を用いて、父親を超えてみせた。俺はそれを認めたいと思う。

そしてそのばんの子も、雌との間に子を生したようだ。いずれはその子達が彼の命を脅かすことがあるとしても、それは自らが父親を倒して世代交代を果たしたのと同じなわけで、別に問題になるようなものでもない。

<子殺し>も<親殺し>も、あくまでも自然の摂理なんだ。

だから、ばんを殺した彼のことも、責めるつもりは毛頭ない。

そんな<野生の獣>そのもののヒト蜘蛛アラクネとほとんど同じ姿を持ちながらもあくまでも<人間>であるアラニーズのキャサリンは、ヒト蜘蛛アラクネに近い野生の獣のような生き方を選びつつも、やはり人間だった。

人間としてビクキアテグ村に<自宅>を持ち、その自宅を拠点として草原に出て狩りをして暮らしている。

その彼女がパートナーのように行動を共にしているのが、

<ドーベルマンMPM十六号機>

だった。十六号機は、元々は、

<ドーベルマンDK-aの量産機>

として作られたドーベルマンMPMの一機であり、<個性>など持たせていないにも拘らず、キャサリンは他でもない十六号機を選んだんだ。

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