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第四世代

ホビットMk-Ⅱ編 挑戦

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一瞬、俺が手にしたタブレットとシモーヌが手にしたタブレットの画面に映し出された映像が入れ替わる。メインのカメラとサブカメラを切り替えたからだ。

その後すぐに、それぞれのタブレットに送信する映像も切り替えたから、俺が見ている方には<ルカニディアの少女>の姿が、シモーヌが見ている方には植物の姿が、ちゃんと映し出された。

だから、ルカニディアの少女にとっては、

『得体の知れない怪物が自分に気付いて頭を向けた』

形になる。

「……」

これに対して彼女は、わずかに体をビクッと反応させたが、それは『怯えている』と言うよりは、

『万が一に備えて自然と体が反応した』

感じだろうな。逃げるにしても攻撃を加えるにしても、躊躇なく全力で臨めるようにするためだ。

しかし当然、ホビットMk-Ⅱが彼女に危害を加えることは決してない。たとえ彼女に攻撃されるような事態になったとしても、必要とあれば完全に無抵抗を貫くことができるのも、ロボットというものだ。

生きていないし心も持たないから、

『身を守る』

ことを意識しなきゃいけないわけじゃないしな。

が、ルカニディアの少女としても、ホビットMk-Ⅱに対して積極的に攻撃する意図はないのが分かる。体にそういう形の緊張感がないんだ。あくまでホビットMk-Ⅱの方から攻撃してくるようなことがあれば対処するための備えだ。

そういう意味での緊張感は確かにある。あるものの、険しい空気感じゃないんだよ。

「……」

で、互いに見つめ合う状態が十秒ほど続き、その上でホビットMk-Ⅱの側が、

『作業に戻るために視線を戻す』

素振りを見せると、ルカニディアの少女の方も、少しホッとしたような気配を見せた気がした。

彼女としても<挑戦>だったんだろうな。

<得体の知れない怪物との距離を詰める挑戦>

ってわけだ。そしてそれは、彼女にとっては悪くない結果をもたらしたらしい。

「……」

遂に完全にホビットMk-Ⅱの前に姿を現して、<作業>を覗き込むような仕草を見せた。

まあ、ホビットMk-Ⅱにしてみれば<頭>を彼女に向けていようといまいと、まったく変わらずに作業を行うことができるんだが、ロボットじゃない彼女からすれば、

『自分が傍にいても気にせず何かをしている』

ように見えるだろうし、それにまた興味を惹かれたんだろうな。

そんなわけで、今度は、

<植物の調査をしているロボットの様子を興味深そうに見ているコスプレ少女>

といった風情の光景が展開されるようになったんだ。

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