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第四世代

ホビットMk-Ⅱ編 ほっこり

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新暦〇〇三九年十月十七日



そんなことを考えつつタブレット越しに見守っている俺の視線の先で、今日も、

<花を育てるホビットMk-Ⅱ>

は、甲斐甲斐しくそれを続けている。その姿は本当に、

『花が好きなんだな』

と思わせるものではあるが、人間はついついそう捉えてしまうが、実際はただただ、

<花を育てる人間のシミュレーション>

として行っているだけなのは事実なんだ。だけなんだが、こまめに肥料を与え、他の植物、つまりこの場合における<雑草>を摘み、虫が付けば<防虫スプレー>で追い払う。というのを淡々と続けている姿には、やっぱり感じ入るものがあるんだよな。

<自分には到底できない行いができていることに対する畏敬の念>

てのも、人間の心がもたらすものだ。それ自体は決して間違っているわけじゃないと俺も思う。思うが、同時に、現実を現実として受け止めなきゃ、

<現実に則した判断>

ってのはできなくなるだろうなとも思う。そのどちらも大切なんだ。

ただのシミュレーションだというのは承知しつつ、だからといってこのホビットMk-Ⅱの姿に感心してる人間に、『ただのシミュレーションだから』的な口出しをするのも野暮ってもんだろうさ。

『このホビットMk-Ⅱには心がある!』

みたいな考えに固執したりするわけじゃなければ、それを基に破壊活動を行ったりするわけじゃなければ、

『花を育てるホビットMk-Ⅱの姿に癒される』

くらいはいいじゃないか。

そう言えば、地球人社会でも、<鉄道の種類>についてやたらと拘るのがいて、鉄道に興味のない人間がそれを混同していたりすると、ひたすらウンチクを並べて訂正しようとするのがいたりしたが、そういうのはただ気持ち悪がられたり煙たがられたりしていただけだよな。

当然か。別に<鉄道の種類>なんてのは、それに興味のない人間の日常生活にはなんの関係もないしな。そんなことを知らなくてもまったく困ることもない。知らなくても困ることがないようにそもそも作られているんだ。

で、<花を育てるホビットMk-Ⅱ>に心があるか否かについても、無闇に拘泥しなければ別に、

『これこれこういう理由でこのホビットMk-Ⅱには心はない』

と面と向かって否定する必要もないさ。ましてや当人がただ癒されてるだけなら、それでいい。<野暮>に拘る必要もない。

俺はそう思うよ。

それに、ヒナを保護して世話するホビットMk-Ⅱ達の姿や、花を育てるホビットMk-Ⅱの姿は、単純に見ていてほっこりするし。

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