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第四世代

ホビットMk-Ⅱ編 自身が心を持っているという認識

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「AIやロボットに心が生じたとされる事例は確認されていません」

エレクシアもきっぱりとそう断言する。

で、これについてメイフェアはどう反応するかと言うと、

「そうですね。私のメモリにもそのような事実があったとは記録されていません」

と、実に淡々とした様子で応えるんだよ。彼女自身は、<シモーヌの姿を再現したグンタイ竜グンタイの女王>を守ろうとしてエレクシアと敵対までしたというのに、

<自身が心を持っているという認識>

はないんだ。まあ、メイフェア達で試されていたのはあくまで、

<ロボットに感情を装備する試み>

であって、

<心を持たせる実験>

じゃなかったしな。

『<感情>と<心>は厳密には別物である』

と、その試みを主導した技術者達は考えていたようだ。

それに、

『感情と心は完全に同一のもの』

だと考えると、

『感情を表に出すことが上手くできない人間には心がないのか?』

的な話にもなりかねないし、そう考えると『なるほど』とも思う。加えて、

『自身の感情ばかりを優先して他者に危害を加えることができてしまう奴には<人の心>が備わってない』

的な話で考えても、<感情>=<心>と必ずしも言い切れないのは事実かもな。

まあこういう言い方をすれば今度は、

『そいつには<心>が備わってないんじゃなくて、他人の痛みを想像できる<想像力>がないだけだろ!』

的な反論をしてくるのがいるだろうが、いや、それって何のための<反論>だ? 

『感情がある』=『心がある』

ってことにしたいのか? それとも、

『他人を平気で傷付けられる自分には人の心が備わってない』

ってことにされたくないから言ってるのか? まあそういう理由でムキになるんなら分からなくもないけどな。

ただ、世間一般には、

『他人の痛みが分からない奴には人の心がない』

って感じの論調の方が優位にある気がするんだけどな。

ここでもまた、

『多数の方が正しい』

ってことにしたいなら、

『他人の痛みが分からない奴には人の心がない。という論調の方が優位にあるんだからそれが正しい』

という話になるよな。

『多数の方が正しい』って話にしたい人間も、自分の意見が少数派だってことになった途端に掌を返すからな。実に分かりやすい<矛盾>だ。だがAIやAIが制御するロボットにはそれがない。矛盾がない。

<巣から落ちたヒナ>を保護するのも、あくまで自分達の行動範囲内で、通常の行動を行っている時に発見した場合に限られる。それ以外のどこで巣から落ちたヒナが命を落とそうとも、まったく気にすることもない。

<心を持つ人間>は、その辺りをなんだかんだと気にするんだよな。

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