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第四世代

ホビットMk-Ⅱ編 データとして蓄積していく

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新暦〇〇三九年十月十日



まあ、修理そのものも、現在はまだ<商業>が成立してないからコストも度外視して<F-1>で新しい部品をすぐに作ってハチ子で届けて、結果、三時間ほどで完了。復帰できた。

と同時に、同じ部品の予備も一緒に作って備蓄しておく。

で、前回の故障から五日後、もう一つの方も同じ部品が壊れた。どうやら設計そのものを見直すか、あくまで消耗品として予備を確保しておく必要がありそうだ。

そういうのも、データとして蓄積していく。もちろん、

<ヒナの保護と世話>

についてのノウハウも蓄えていくけどな。すべての<巣から落ちたヒナ>を保護することはできなくても、たまたま遭遇してしまったら見捨てておけなかったりするのも人間という生き物だし、そのためにもこういうノウハウも必要だろうさ。

そして前回の故障の対応によって確保されていた予備の部品を使って、今回についてはものの十数分で<親鳥>は復帰できた。

まあもっとドラマチックに描けば面白くもなるのかもしれないが、別に誰に見せるでもない<日記の類>でそんなことに拘っても仕方ないだろ。

錬慈れんじはタブレット越しに自分でその顛末を見て、

「よかったね♡」

笑顔でそう言ってくれたし、俺としては十分だ。

肉体的にも完全に<地球人としてのそれ>しか備わってない彼は、メンタリティの面でもまるっきり俺とシモーヌを手本にしたものが育ちつつあると思う。

<魔の二歳児>と俗に言われる過剰な反応もほとんど見られなかった。

もちろん、我儘を口にすることはたまにあるものの、大きな声を上げて時には暴力を振るって俺やシモーヌに言うことを聞かせようとはしないんだよ。俺もシモーヌも、どこまでも彼の言葉に耳を傾けて視線を合わせて丁寧に接しようとするから、<それ以外のやり方>を知らないんだ。

『知らない』んだから当然、そういうやり方ができない。

単純な話だろ?

だが同時に、自分を容赦なく傷付けようとするどころかまず命を狙ってくる、

<恐ろしい存在>

がいることも、承知している。すぐ身近に常に<命のやり取り>が溢れてるから、自然とそういうのも目に入ってくるしな。

だからそういうのから身を守る術や心得も、まさしく皮膚感覚で身に付けていくことができるわけだ。

それでも、まだまだ幼い子供ゆえの、

<同時にいくつものことを気にすることができない視野の狭さ>

はしっかりとあるから、

『なにかに気を取られると他のことが頭から飛んでしまう』

という危なっかしさは要注意だ。俺もシモーヌももちろん気にしてるが、人間である以上は完璧ではいられないし、そこはエレクシアやイレーネやセシリアに補ってもらってる。

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