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第四世代

ホビットMk-Ⅱ編 過酷な使用

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新暦〇〇三九年十月五日



ところで、以前に触れた<巣から落ちたヒナ>については、当然、とっくの昔に巣立って野生に帰っていった。ホビットサンク村のすぐ近くでパートナーを見付けて巣を作り、卵を生み、ヒナを育て、そのヒナも近々巣立ちそうだ。ここまでのところ、これといって問題も生じていない。しっかりと野生のままの形で生きていけている。

<長い棒が付いた精工に作られた親鳥の人形>

を使ってなるべく野生に近い状態で飼育したことが功を奏した形だな。

が、その<長い棒が付いた精工に作られた親鳥の人形>は、

『お役御免』

とはいかなかった。今まさに現役で役に立っている。

と言うのも、また村のすぐ近くで巣から落ちていたヒナが保護されたんだ。まあ、こういうのは割と頻繁に起こっていることなんだろう。その中で生き延びた個体が次の世代を残すことができると。

とは言え、<巣から落ちた個体>が他に比べて劣っているかと言えば必ずしもそうじゃないのも事実だ。巣から落ちて命も落とすか、しっかりと親鳥に育ててもらえて巣立っていくかは、『たまたま』なんだよ。

だったら、『たまたま』ホビットMk-Ⅱに発見されて保護されて育てられたとしても何も問題ないよな。『たまたま』なんだから。

<種の総数>についても、

<ホビットサンク村の周辺でホビットMk-Ⅱに保護される数>

なんて、全体から見ればそれこそ<誤差の範囲>程度のものだろうさ。実際、ホビットサンク村ではまだこれで三羽目だしな。

だから別に気負うこともなく、ホビットMk-Ⅱにそういうヒナを保護し育ててもらってる。

で、今回も、朝から晩まで、途絶えることなく<長い棒が付いた精工に作られた親鳥の人形>を用いてヒナに餌を与え続けてると。

だがこの日、

「あ……!」

俺がタブレット越しにその様子を見守っていると、<親鳥の人形>がボトリと床に落ちてしまった。しかも、床に落ちた状態でバタバタと羽ばたく。

それを、ホビットMk-Ⅱがさっとマニピュレータを伸ばして回収した。

棒との接続部分が疲労により破損してしまったんだ。親鳥の人形を敢えて羽ばたかせることで大きな負荷が掛かることは最初から分かっていたし、計算上は十分な強度と耐久性を与えていたはずの部品だが、想定していた以上に過酷な使用だったということなんだろう。

いやはや、親鳥の大変さが偲ばれるな。

幸い、<親鳥の人形>なのでペアとして二体用意してあるから、壊れた方を修理中はもう一体で対処ができた。

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