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第四世代

閑話休題 必要なこと

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『おねえちゃん、すごいすごい♡』

錬慈れんじがそう喜んでくれたことに気を良くして、さらにいいところを見せようとして調子に乗ってしまった萌花ほのかだったが、だからこそ自分が掴まっていた部分が劣化して強度が下がっていたことに気付けなかった。

野生で生きる上において、

『危険を察知する』

ことは必須の能力である。樹上生活を行うパパニアンにとっては、自分が体を預ける木の枝などが十分な強度を持っているか否かを察知するのは非常に重要だった。飛び移った先の木の枝が腐っていたりして折れてしまっても、すぐさま次の動作に移れるのが当然だった。

でなければ、無防備なまま転落してしまってそれこそ命に関わる。しかしこの時の彼女は、迂闊にもそれを失念していた。

「あ……!」

実質的に<姉>のような存在である萌花ほのかの体がほとんど無防備な状態で空中に投げ出されたことに、錬慈れんじが思わず声を上げる。

が、そういう場合でもなるべくダメージが少なくなるように咄嗟の反応ができることもまた、生きる上においては必要な能力であろう。

「っ!?」

一瞬、焦った様子を見せた萌花ほのかだったが、同時に空中で姿勢を整えて、四つん這いの状態で難なく地上に下り立って見せた。

すると錬慈れんじが、

「おねえちゃん、すごぉい♡」

さらに感心したように目を大きく見開いて手を叩いて歓声を上げた。これには、

「へへ~♡ 当然♡」

萌花ほのかも自慢げに笑顔を浮かべる。浮かべるが、内心では、

『びっくりしたあ……!』

とは思っていたりもしたが。

その破砕音を聞きつけて、

「おい、大丈夫か?」

萌花ほのかにとっては<祖父>であり、錬慈れんじにとっては<父親>である錬是れんぜが声を掛けてきた。

「パパ! おねえちゃんすごいんだよ!」

錬慈れんじはあくまでまるで自分のことのように自慢げに口にした。その一方で萌花ほのかは、

「ごめんなさい……」

言いながら、壊れた屋根の縁を拾い上げて連是れんぜに示した。

しかしそんな孫娘に対して祖父は、

「ああ、大丈夫だ。エレクシアがすぐに直してくれるさ。でも、ちゃんと言ってくれてありがとう」

彼女の頭を撫でつつ口にする。その表情はどこまでも穏やかだった。

パパニアンである彼女がこういう形で<遊び>ながら自身のパフォーマンスを磨いていることは承知していた。けっしてただの<悪ふざけ>でないことは承知していたのだ。だから無闇に怒鳴ったりもしない。必要なことなのだから。

その上で、家を壊してしまったことを彼女が申し訳なく感じている点については、しっかりと認めてくれたのだった。

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