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第四世代

丈編 エピローグ

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新暦〇〇三八年九月二十八日



こうして、じんとの間にできた俺の子であるめいじょうが、この世を去った。

めいはまだその気配を伝えてくれてたのに、じょうはまったくそれを悟らせなかった。まだもうしばらくこんな毎日が続くと俺に思わせておいて、これだもんな。

まったく、親不孝な息子だよ。

とはいえ、それさえ所詮は<地球人の感覚>でしかない。野生に生きるあいつらにはまるで通じないものなんだ。考慮しなきゃいけないものでもない。

そして、じょうのパートナーであるゆうも、彼が亡くなったことについてなんの反応も見せなかった。ただ、少しだけ、彼の仮の巣がある方に視線を向けていたりしたこともあっただけだ。それ自体、何らかの意図があってのことなのか、たまたま視線を向けたのを俺がそこに意味を見出そうとしてしまったのかは、分からないけどな。

ましてやじょうの子であるりく游煉ゆうれんはそれこそ自分達の父親の死を知ることさえなく、今日も平穏に暮らしている。

これを<薄情>なんて評するのは、<地球人ならではの傲慢さ>だろうな。だから俺はそんなことを口にする奴を許さない。許さないが、これさえやっぱり<地球人ならではの傲慢さ>なんだとも思う。

とは言え、

<まったくの不意打ちで我が子の死を知らされた親>

としては、どうしてもやるせない気持ちにはなる。

じょう……お前って奴は……」

つい恨み言を口にしてしまいそうになる。なるが、そういう親としての気持ちと同時に、

『それがあいつらなんだよな……』

という認識もしっかりとあるんだ。これがなきゃ、ここで穏やかに生きていくことはできない。

つくづく、『生きる』ってのは思うに任せないことばかりだ。でもな、その一方で楽しいこと嬉しいことも決して少なくないんだよ。自分が<嫌なこと><不快なこと>の原因をばら撒いたりしなきゃ、そこまで嫌なことや不快なことばっかりってわけでもなかったりする。

誰かを<攻撃>すれば当然、それが自分にも返ってくるし、誰かに恨まれれば有形無形の<報復>があるだろう。そんなことをしなくても嫌なこと不快なことはいくらでもあるってのに、自らそれの原因を作ってたんなら、そりゃ絶え間なく生じたりもするさ。

『自分の子供に恨まれる』

なんてことをしてりゃ、覿面にロクでもない結果を招くだろうな。直接自分に返ってくることもそうだし、他の誰かに八つ当たりという形でトラブルを起こされて巻き込まれるのもよくある話だろうしな。

<イジメ>が事件化したりするのはまさしくそれだろうさ。

だが、じょうはそうじゃなかった。ただただマンティアンとしての生を全うしてくれたんだ。

その意味じゃ、立派な<孝行息子>だよ。

ありがとうな、じょう

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