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第四世代

丈編 死中に活を見出す戦法

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タイヤを拳に見立てたホビットMk-Ⅱの打撃をものともせず、猪竜シシはホビットMk-Ⅱに突撃した。

すると、まるでバイクとでも衝突したかのような、

「ガシャッ!!」

という衝撃音と共に、ホビットMk-Ⅱが跳ね飛ばされた。重量は七十キロを超えるホビットMk-Ⅱが、せいぜい四十キロ程度の猪竜シシにだ。

人間(地球人)の場合だと、

『そんなわけあるか』

とバカにされるような光景だが、野生の獣の場合はその限りでもない。それに、小柄な小学生が乗る自転車に勢いよくぶつかられたら、子供の体重と自転車の重量を合わせたそれよりも体重のある大人でも転倒だってするだろうし、怪我だってするだろうさ。

つまりそういうことだ。それだけ猪竜シシの突進力がずば抜けてるんだよ。そしてそれを活かす頑健さと同時に柔軟性も備えてる。ぶつかった衝撃で自身が致命傷を負わないようになってるんだ。体もろとも相手に突撃することに特化した進化を遂げているのが猪竜シシという獣ってわけだな。

実に単純ではあるものの、他に武器を使うことのない獣にとっては大変に高効率なそれではある。

なにしろ、身一つで突っ込んで行けばいいんだからな。

無謀としか思えないような激しい気性も、そんな自身の特性を最大限に活かすためには必要だったんだろう。単に『愚か』と切り捨てるのも違うとは思う。結果として自らの命を危険に曝す可能性もあっても、躊躇なく体ごとぶつかっていける気性があってこそ最大限の威力を発揮できるということだ。

ある意味、

<死中に活を見出す戦法>

かもしれないな。

もっとも、先にも触れたようにそれが逆に自身を危険に陥れる場合もあるわけで、なんとも紙一重ではある。

それでも<種>としてはまあまあ栄えてる方だから、生存戦略としては必ずしも間違っていないんだろうな。

で、そんな猪竜シシに撥ね飛ばされたホビットMk-Ⅱのステータス画面が一瞬で真っ赤に染まる。生身の人間だったらそれこそ致命傷を受けたような状態だ。

しかし、ロボットはそんなことは気にしない。猪竜シシがホビットMk-Ⅱを撥ね飛ばしたのと同時に、ヤリを構えた他のホビットMk-Ⅱがそれを猪竜シシの体に突き立てていた。その穂先の一つが、脇腹から体内に潜り込んで心臓を突き破る。

「ギピーッッッ!!」

断末魔の悲鳴を上げつつ、猪竜シシの体がビクンッと跳ねた。なおも暴れようとするものの、さすがに心臓を破壊されてはどうにもならない。当然のごとく瞬く間に脳に血が届かなくなり、機能が失われる。

ほぼ即死だな。

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