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第四世代

丈編 万年単位だと

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「ビッ!?」

ホビットMk-Ⅱが放った矢は確実に猪竜シシを捉え、悲鳴が上がる。が、矢の軌道がぶれて急所を外したようだ。一発では致命傷にならなかった。大型の猪竜シシだと元々この程度の矢じゃそうそう致命傷を負わせられないのは分かっていたが、今回の小型の猪竜シシなら、確実に急所を捉えれば倒せる可能性は十分あった。あったものの、弓矢の工作精度がアレだからなあ。いくらロボットが作っているとはいっても、ホビットMk-Ⅱ自体が専用の工作用ロボットじゃないし。

で、猪竜シシの方は、攻撃を受けて逃げるどころか、完全に逆上して、

「ギピーッッッ!!」

激高しながら猛然と突進してきた。小型とはいえ実に猪竜シシらしい反応だ。これに比べればボクサー竜ボクサーの方がよっぽど臆病だよ。いや、それが本来なら普通なんだが。

ちなみにボクサー竜ボクサーの方も、地域によってそれなりに差があって、<別の種>として分類されることになるようだ。アカトキツユ村周辺に生息してるボクサー竜ボクサーは、駿しゅん達とは完全に別の種と言っていいほど遺伝子的には離れてしまっているらしい。

地続きの近い地域のそれだとなんだかんだと交配して交雑していくらしいが、それなりの規模の河があると、どうしても分断されるからな。アカトキツユ村も、俺達の集落の近くを流れるそれに比べれば小さいにしても、例の<不定形生物>が実際に生息してるのが確認できる程度の河の向こうに位置してるからな。猪竜シシボクサー竜ボクサーも、基本的に交流はない。

それでも、川幅が小さいことで何かの拍子で向こう岸に渡ったか、もしくは河の方が後からできたかして、猪竜シシボクサー竜ボクサーも生息してるって状態ではある。

ヒト蜘蛛アラクネの生息域がはっきりと区切られているのとは対照的だな。まあ、河の規模がそれだけ大きくて、少なくともヒト蜘蛛アラクネが誕生して以降は流域が変わっていないということも示してるのかもしれないな。

なにしろ、長くてもたった二千年程度の話であればそういうことも有り得るか。もちろん百年単位で流域が変化することもあるだろうが、逆に二千年程度なら大きく変わらない場合があっても別におかしくはないはずだ。

これが万年単位だとさすがに普通じゃないかもしれないとしても。

そもそもこの惑星の万年単位となれば、もしかすると例の不定形生物を生み出した者達の文明そのものがまだ形を保っていたかもしれない。

もっとも、現状ではその痕跡と言えるものは、<例の不定形生物>だけだし、それ自体、ただの推測の域を出ないものだしな。

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